生活普段議 
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第13号   山本健太郎さん  「僕は、一台乗ると長いです」
今回は、kaデザインの山本健太郎さんを訪ねました。
事務所は東京の都心近くにありますが、テレデザインがある一角はお寺あり池ありで、まるで別世界に迷い込んだようでした。車とバイクをこよなく愛する山本さんも、ある意味「別世界」な雰囲気をお持ちでした。
山本 健太郎(やまもと けんたろう)

1966年 宮城県生まれ
1987年 国立宮城工業高等専門学校建築学科卒業
1996年 ケンタロー・アーキテクツ設立
1999年 テレデザイン・コラボレーションの設立に参画
2001年 (有)Kaテレデザインへ名称変更
2005年 (有)Kaデザインへ名称変更

Kaデザインのホームページ http://www.ka-design-studio.com/

まずは、その場所に驚く!●
鄭:
ここに来てちょっとビックリしたんですけど、建物自体も結構変わっていますね。
山本:
そうですね。
小林:
地図通りに来たら、最初にお寺が見えて、「ん??間違えたか」と思いました。よく見たら、会館の2階だと書いてあったので、「ああ、ここだ」と。それで、入ってみたら中もいろんな会社が入っているようで、面白いなーと。
山本:
庭にも池とかがあって、カエルとかもいるんですよね。


鄭:
お寺のところを入ってきて、会館の方に回ってきた段階で、東京ではあんまり感じないような・・・においっていうのかな?すごく感じて。
山本:
そうですね。土のにおいとか、草のにおいとか。
小林:
ここは、みずほ会館となってますけど、なにか会合の場所だったりしたんですか?
山本:
いろんなことに使われた建物らしいんです。トレース事務所だったり、お茶の工場だったり、学習塾だったり、いろんな履歴があるみたいで、築50年以上経つと思うんですけど。しばらくは空いてたらしいんです。それをオープンスタジオNOPEの代表の田島が探し出してきて、ここでオープンスタジオをやることになったんです。いまはどちらかというと、会社がいっぱい入っている状態なんですが、当初はほとんどアーティストとか、そういう人たちばかりだったんですよ。画家とか彫刻家とか版画家とか、そういう人たちがほとんどだったんですね。僕は設計事務所として途中から入って、田島も設計事務所やっていることもあり、気がつくと設計事務所がいっぱいになってきて。いまは設計事務所が4社、9坪ハウスのコムデザインが大きな面積をとっていて、あとは版画家とペインターがいます。あと、放送作家みたいな人もいます。
小林:
おもしろいですね。
山本:
かなり特殊な。
小林:
全体がスタジオNOPEということですか?
山本:
そうですね、このフロアーをオープンスタジオとして使っている訳です。このみずほ会館という建物自体おもしろくて、赤い階段があったでしょう?そっちは照明デザインの会社なんですよ。1階は照明器具の企画製造とか、ホテルの照明計画とかをやっていて。おもしろいんですね、入ってる人たちが。ふしぎな集まりになっています。
鄭:
築50年?
山本:
50年以上は経っているみたいですね。戦後すぐ位じゃないですか?
鄭:
もともとは、お寺の付属物だったんでしょうか?
山本:
その辺のことは分からないんですよ。
小林:
こういう風に改装をしたのは、オープンスタジオを始めるときに?
山本:
そうですね、昔はその白い壁のラインまで天井があったんですけども、全部取っ払って、小屋裏が見える形にして。
小林:
先ほどから、いろんな方が出入りして、すれ違ったりしてますけど、刺激が多そうですね。
山本:
おもしろいですね、いろんな人が来るし。そういうつながりの中で、新しいネットワークができたりっていうのがありますから、かなりおもしろいですね。
打ち合わせスペースにも圧倒されます●
小林:
打ち合わせに来たお客さんがビックリしませんか?
山本:
大抵、この空間を見ると思わずこうやって見上げていますね。
小林:
僕も、やりました(笑)。
鄭:
小屋裏って、ふつうは見られないですしね。
山本:
これは魅せる小屋裏でもないですしね。でも、こういうところでやっていると、天井は高いのが普通に思えてきますね。
鄭:
そうでしょうねー。
山本:
僕の事務所自体が手狭になってきたので、場所を探しているんですけど、天井の高いところはどうしても値段も高いんですよね。
小林:

空間のこういう感じとか、最初にアーティストの方が集まったということからして、N.Y.のSOHOのイメージがありますね。

山本:
そうですね。昔は良い意味でルーズで、夕方になるとみんなビールだワインだと飲み始めて、音楽がガンガンなって。昔はそういう感じでした。今はみんな忙しくてしているんで、ちょっと暗いかなー、と(笑)。
テレデザインって?●
小林:
WEBサイトを拝見すると、テレデザインはいろいろな活動をされているようですが?
山本:
その前にね、まずテレデザインについての説明をしなければいけないと思うんです。
総称としているテレデザインというのはネットワークなんですね。そのメンツとして、5〜6人コアメンバーがいるわけです(テレデザインのダイアグラム)。法人としては有限会社Kaデザインが僕の会社で、株式会社テレデザインが田島と松葉がやってる会社。あとランドスケープデザインをやっている柳原が会社を持っているんですけども、個人事務所としてやっている人もいます。そういうものの集合体として、テレデザインがあるわけです。このホームページの中でも、いろんな物件が出てくるんですが、必ずしもテレデザイン全体でやっているという訳ではないんです。なので、いろいろあるけれども、全部に僕が関わっているのではないんですね。
小林:
見ていくと、ほんとにいろんな。
山本:
そうですね、基本的に「建築だけ!」とはメンバーみんな考えていなくて。都市のスケールからプロダクトのスケールまで、いろんなことをやっているんですね。そういうのが趣旨なんです。だから、どうしても肩書き上建築家っていうのが多くなっちゃってるんですが、おもしろい人がいれば参加してもらってもいいし、このメンバーも別に恒久的なものではないし、抜ける人もいるかもしれないし、入ってくる人もいるかもしれない。
小林:
どういうきっかけで、今のメンバーは集まったんですか?
山本:
核になっているのは田島ですね。田島が知り合いに声をかけて興味を持ってくれた人が集まって、最初はほとんどが「どうも始めまして」という状態で。よく、こういうグループは大学が一緒だとか、設計事務所が一緒だったとか、そういうのが多いじゃないですか。どこかでキャリアを共有している時期があるものですけど、そういうのが実は全くないんですよ。
鄭:
基本的には田島さんを介してということですか?
山本:
そうですね。僕の会社もそれに合わせて、ある時にKaテレデザインに社名変更したんですけど、ちょっと紛らわしいという声が聞かれて…(笑)。
小林:
外から見ると、実態としてのテレデザインっていうのは、ちょっと見えにくい感じですね。
山本:
境界線が曖昧なんですね。どこまでをテレデザインとするのか。実際には社員でも何でもないんだけど、プロジェクトの規模に応じて一緒にやることもよくあるので、そういうものも引っ括めてテレデザインだというのもあるし。いろいろなんです。
小林:
ここで働きたいとか、活動したいという人は多いのですか?
山本:
スタッフとして働きたいという人は、結構多いですね。でも、コアメンバーになりたいっていうのは、そんなにいないです。
鄭:
コアスタッフの募集とかはしているんですか?
山本:
まあ、してないんですけどね。でも、やりたいという人は、たまーにいますけどね。年に1回あるかないかです。ワークとして一緒にできるかどうかっていうのも、業界が違ったりするとなかなか難しいんですよね。
小林:
相性というのもありますよね。その辺は、勘ですか?
山本:
勘というか、とりあえずやってみないと分からないんで。やってみて、だめだったらしょうがないですよね。
小林:
テレデザインの将来像として、大きくしていこうというようなビジョンはあるんですか?
山本:
僕としては、自分の会社があってスタッフがいて、自分のワークを基本的にはやっているんで、「テレデザインをこうしていこう」というようなのは、そんなにはないですね。
小林:
そこがおもしろいところですね。各々で固まっていて、それが集まる場がまたある。
山本:
逆に言えば、もたれ合わない関係じゃないとまずい訳です。自分で営業して、自分で仕事をとってくることができる人たちじゃないと、成り立たないと思いますね。内輪で「仕事ちょうだい」みたいな話があると、完全にヒエラルキーができちゃうんで。そういう関係であってはいけないと思うし。
プロダクトデザインにも進出●
鄭:
山本さんは専ら建築が主なんですか?
山本:
僕は、建築が多いんですけど、去年くらいからプロダクトにも力を入れていて。
鄭:
プロダクトというと?
山本:
アルミのシェルフとかですね。
小林:
ホームページに紹介されていましたね。
押出し材のジョイントと、板を組み合わせたものですね。これは、とても奇麗ですよね。シャープな感じで。
山本:
山本理顕さんのやつとカブるんですけどね(笑)。
鄭:
でも、だいぶ前から、やってらっしゃるんですね。
山本:
そうですね、元々は2001年くらいから考えていて、それが最近やっとここまで来たという感じ。
小林:
パーツごとに交換できる感じなんですか?
山本:
どうにでもなっちゃうんですよ。基本的には押出し材のコーナーパーツとそこにジョイントする、これも押出し材の面材のパーツの組み合わせで。これだけで、まず基本的なシェルフは作れて、そこに面材の溝を使ってスライド丁番であるとか、引出しのレールとかをアタッチメントしていくことで、どんなスタイルにでもなるようになっています。スパンも、今これは350mmのグリッドですけど、3スパンくらいまでは飛ばせそうです。目指すはアルミ版ハラーシステムですね。
小林:
板の方も押出し材なんですね。
山本:
これも押出し材です。
小林:
じゃあ、長さはある程度自由になるんですね。
山本:
自由になります。これだとコーナーは角がちゃんとピンと出て、フラットなところではちゃんとフラットになる訳です。これ以外にも、こういうアルミの押出し材が好きというのもあって、いろいろなアルミのプロダクトを考えているところです。押出し材の断面って、隠すものだったじゃないですか。でもあの断面って奇麗だなと思うんですよ。
鄭:
そうそう、奇麗ですよね。
山本:
それを、前面に押出したのをやりたいなと思っているんです。
小林:
断面を「押出す」押出し材。
山本:
うまいなー(笑)。キャッチコピーになりますね。
建築への危機感●
山本:
僕はどちらかというと、こういうプロダクトの方が結構おもしろくて・・・これは、オフレコになっちゃうかもしれないけど、設計事務所って旧態依然としたワークスタイルとか、利益の出づらい構造なんですよね。よほど有名になって、誰でもが知っているという風になってくれば別なんでしょうけど。僕らの世代でも食えない人はいっぱいいるわけですよ。これは、イカンだろうと。僕は元々色んなことに興味があるし、建築だけにこだわる理由は無いわけで。こういうプロダクトもやったりしていかなければ、生き残っていけないんじゃないかと思っているんです。最終的には、デザインするだけではなくて、ものを売るとかそういう所までいかなきゃだめだなと。だから、本当は自分で売りたいんですよ。結局、プロダクトデザインにしろ、建築にしろ、自分で売るというのを我々はしないでしょう。BtoCというのをやっていくべきだと思うんです。
鄭:
そこから学べる事は多いはずですよね。
山本:
そこでしか僕らが生き残れないのであれば仕方がないのかもしれませんね。ただし「安い住宅」=「建築家」だけでは辛いですが。メディアの影響も多分にあるでしょう。
小林:
生活普段議で取材に回ってますと、みなさんそういうことを感じているようで、でもどうしたら良いかというのは・・・。
山本:
すごい危機感はありますよ。このままじゃイカンという。
鄭:
最近僕らが取材に伺った方は、傾向として、とにかく建築というよりは、建築はもちろんベースにあるんだけれど、それ以外のことにも様々に関係を持つ中で、建築というものを考えたいなという方が割と多かったですね。その辺は、山本さんのおっしゃるように危機感から発しているものなのかな、と思うんですけど。その危機感っていうのは「このままじゃ食えない」ってだけじゃないと思うんですよ。
山本:
そう、それだけではないです。建築設計という業界そのものがこのままで良いのかっていうのが、まずあるし。たぶん端から見ると、「よくそんなやり方で成り立つよね」っていうことがすごく多いと思う。例えばプロダクトデザイナーなんかから見ると、設計事務所のオープンデスク(学生などが勉強を兼ねて設計事務所の業務を無給で手伝うこと)とかね。信じられないと言うわけですよ。でも、そういうことでもしないと動かしていけないわけですよね、実際は。そういうスタイルが定着しちゃってて、そうでなければまわらない会社ってなに!?根本的におかしいんじゃないか。給料なんかにしても極端に安いでしょ、ほかの業種に比べても。それでもがんばってくれるスタッフは有難いけれども、それじゃあいつまで経っても良い環境にならないと思うんですよね。
鄭:
その通りですよね。
山本:
僕なんかが、スタッフによく言うのは、「早く帰れ」ということなんです。仕事はもちろんしてもらわなくちゃいけないんだけれども、効率よくやって早く帰りなさい。早く帰って、映画を見るなりご飯を作るなり、自分の仕事以外の時間、仕事以外の人付き合い、建築以外の人付き合いを作りなさい、と言うんですよ。でないと、ぜったい住宅なんかの設計はできないし。逆に言えば、そういうことができる環境を、経営者サイドはつくってあげないといけないわけです。ちゃんと利益を出して、スタッフにちゃんと給料を出して、人並みの生活をさせてあげないと。
小林:
実際に、皆さん帰宅時間は?
山本:
遅いですよね。まだね。終電間際になっちゃいます。その辺がいま僕の一番の悩みどころです。
鄭:
建築とWEBデザインを比べると、やっていることの重みは、建築の方が全体的に重いことをやっているんですけれど、社会的に見たときの認知度は、全然違っていますね。WEBデザインの場合は外から見ている人は我々がその中で何をやっているかは、ほとんど分かっていなかったりするんですけど、割とすんなりこちらからコストを提示しやすい。条件に対して人工計算すれば、それで話が通るような所がある。建築の場合は、もし人工に単価をかけて計算したら大変な値段になるということもあるんですが、なかなかそういう風には受け取ってもらえないですよね。
山本:
そうですよね。それって、おかしいですよね。
鄭:
なぜなんでしょうね?設計が進んで行くうちに、お施主さんも設計事務所の実態に気が付き始めて、「こんな金額で大丈夫なんですか?」って聞かれたことがありますけど(笑)。
山本:
うちは不幸にもそういうことはないですね(笑)。いや、でもそれは不幸ですよね、要するにがんばってるって思われていないわけだから。「設計料はいくらですか?」と聞かれて、「これくらいです」と言うと、みんな「高い」ってビックリしますよね。一応フォーマットがあって、坪いくらという感じで見せるんですけど、そこで引いちゃう人もいる。個人のお施主さんなんかは、設計料がいくらとか、そういうのではなくて、「全部で幾らでできますか?」というような話が多いんですよね。で、設計っていうものが実際どういうワークなのかは分からないじゃないですか。一応説明はするんだけれども、なかなか理解してもらえない。だいたい、実施図がアップした時に、その厚みに「えっ!?」という感じで。
小林:
そこではじめて、こんなヴォリュームになるのかと。
山本:
そうそう。そこではじめて理解するという感じが多いですね。
小林:
設計の側も、オープンデスクなんかの経験があると、労働力というのは安いんだと自分から先入観を持ってしまっている所もありますよね。悪循環になっている。
山本:
それもありますね。それをなんとかして断ち切りたいんですけどね。でも、結局もう9年くらい事務所をやっていますけど、多分設計業務だけでその状況を変えていくのは難しいかな、と思いますね。そういうこともあって、設計に限らず興味のあることは何でもやって行こうと思っているわけです。
ほんとはプロダクトデザインがやりたくて…●
山本:
でも、そういうネガティブな理由だけでこういうものをやり始めたんじゃなくて。もともと僕はプロダクトデザインがやりたかったんです。実は。
小林:
そうなんですか?
山本:
なんで建築に入ったかっていうと…。まだ中学生くらいの頃なんですけど、ちょうどイタリアンモダンが一番最初に日本で流行ったくらいの頃なんですよね、アキッレ・カスティリオーニとかエットーレ・ソットサスが、ぐぐっと日本でも認知されてきて、20年以上前のことですけどね、その頃に、そういうのをいいなーっと思って見ていたんですよ。で、デザインしたのが誰々っと書いてあるじゃないですか。で横に「(建築家)」と書いてあるんですよ。ああ、建築家っていうのがこういう仕事をするんだ、と大きな勘違いをして、それからですね。だから、その頃はプロダクトデザインということを知らなかった。そういうものは建築家がやるもんだと思っていた。
鄭:
騙されてたんですね(笑)。
山本:
騙されてた(笑)。それで、建築やってみようと。もともと、そういうモノ作りとかが好きだったから。で、入ったはいいんですけど、ああなんだ建築やるんだと。大きな勘違いですよね。
一同:
(笑)
小林:
そこで、方向転換せずに建築を続けた理由は?
山本:
それは、やってみたらおもしろかったからですね。でも普通のアトリエ系の設計事務所の人と違うのは、キャリアがちょっと変で、工専を出て最初に入ったのが、製紙工場なんですよ。そこで営繕をやってたんですね。
小林:
そうなんですか。
鄭:
それじゃあ、工場とかの設計を?
山本:
そうです。常磐線の金町っていう、松戸の一歩手前なんですけど、そこに17万平米くらいの大きな工場があって。そこで4年くらい勤めて、辞めて。1年くらい、ヨーロッパ旅行とかしていたんですけど、そのあとゼネコンの設計部に入ったんですよ。そこでまた4年くらい。設計業務っていうのはそこで覚えたんですよね。だから僕はアトリエ系の事務所っていうのは行ったことがないんですよ。
ゼネコンではマンションの設計ばっかりやってましたね。そのころのマンションって、現在のほどにはおもしろくはなかったので、辞めて独立したんですよ。

小林:

そういう中でも、最終的に独立してデザインの方に行くということは、やっぱりずっとデザインへの想いみたいなのがあったんですか?
山本:
ありましたね。ゼネコンのときはホントに浮いてましたね。
小林:
周りの人はそういうことには興味がないんですか?
山本:
なかったですね。そういうことには興味がある人は、辞めて行ってしまうんです。そういう人たちとは今も付き合いがあるけど・・・。

鄭:

その間に、どこかのアトリエに入ろうとかは考えなかったんですか?
山本:
そう、考えなかったんですね。ていうか、食っていけないんですよやっぱり。ぼくは、実家が仙台だったので、地元で設計事務所っていうと、針生承一さんくらいだったし。仕事するなら東京でと思っていたんで、東京で設計事務所勤めじゃ、食っていけないと。
小林:
じゃあ、独立したときは、かなり思い切った感じですか?
山本:
そうですね、ちょうどその時に家を建ててたんですよ。自分の家を。

鄭:

その設計からですか?
山本:
それはまだ社員の時でしたけど、家を建てて、竣工したと同時に会社を辞めたんですよ。ローンだけ背負ったみたいな!
一同:
(笑)
小林:
会社勤めしながら、設計と現場をみていた?
鄭:
でも、それはすごく楽しかったんじゃないですか?
山本:
おもしろかったですね。むちゃくちゃ忙しかったですけど、結局出来上がったものが満足できているかっていうと、そうでもないんですけど。今になってみると、あれがなーっていう事がいっぱいあるんで。自分が施主でもあるし、無いものは出せないわけじゃないですか。納得は出来てないんですけども、それが雑誌とか建物探訪とかに幸運にも出られたんですね。それでなんとか食いつなげたような感じですね。

小林:

そういうメディアにでると、仕事の話が来ますか?
山本:
来ました。で、僕はガレージ付きの住宅が極端に多いんです。それは、僕が車とかオートバイが好きだってのもあるんですけど、自分の家もそういうガレージ付きになっていて、それを雑誌に売り込んだら、ガレージライフっていう雑誌が連載をくれたんです。季刊誌なんで、年4回連載をやって、そういうルートで仕事が来るようになりました。それで、なんとか食って行けるようになりましたね。
鄭:
生活普段議もそんな事を言われるようになりたいですね!そうなるとすごく嬉しいだろうな。
やっとモノの話に…、まずは車から●
小林:
車がお好きという事ですが、これまでに何台も?
山本:
割と、一台乗ると長いので。最初はシトロエンの2CV、それは最後の新車だったんですよ。それから、なぜか日産のマーチに乗って。その後VWのポロかな。その次からルノーのアルピーヌ。いまはアルピーヌの2台目です。
鄭:
割とフランス車が好きですか?
山本:
フランスが好きですね。いまは、足車もシトロエンBX。
鄭:
良いですよね、フランス車って。と言っても、僕はフランス車に乗ってた事はないんですが。
小林:
2CVは?
山本:
2CVはもう今はなくて。売ってしまったんですね。
鄭:
あれは、ドアが簡単に外せたりするんですよね。
山本:
そうそう、ボンネットなんかもこうやって持ち上げて、横から押すだけで外れちゃうんです。あのヒンジは差込まれているだけなんで、横にずらせば外れるようになってるんですね。高速道路を走ってるとドアとボディの隙間がぐーっと広がって来てね。「ありえねー」って。
一同:
(笑)
鄭:
あれは高速走る車じゃないかも知れませんね。
山本:
でも、あれをベタ踏みにするのがまた面白かったんです。「お、こんなにスピード出たよ」って!
鄭:
でも乗り心地は結構良いって聞きますね。
山本:
いいですよ。
小林:
サスペンションの機構も特殊なものだと・・・、車輪が何かに乗り上げて持ち上がると対角線上の車輪もこう上がって乗り心地を損なわないようにする…、すごく工夫されていると。(この機構は前後関連懸架というらしい)
山本:
そうそう、それが面白いんですよ。カーブを曲がりながら、ブレーキ踏んで止まるじゃないですか、そうするとそのままの姿勢で止まるんですよ。コーナーが来ると車体がロールするでしょ。サスは柔らかいから、ぐーっと傾いて、その状態でブレーキかけると止まるじゃないですか。で、普通はすっと戻るんですけど、2CVは戻らない。
小林:
ははっ。
山本:
で、ブレーキから足を放すと、元に戻るんです。
鄭:
へー、バイクと一緒ですね。バイクもサス沈ませて止まると、ブレーキをかけている限りはそのままの状態ですよね。
バイクは入院中●
小林:
そういえばバイクもお好きだと。今は何を?
山本:
バイクはねアプリリアのモト6.5というやつなんですけど、スタルク(フィリップ・スタルク)デザインなんですよ。その、黒なんですよ。
小林:
これは単気筒ですか、排気量は?
山本:
650ccです。もう半年以上、1年近く動いてないですね。部品がなくて。オーバーヒートしちゃって、部品を頼んでるんですけど、未だに来ない。もう10ヶ月くらい。その前はドゥカティですね。
鄭:
やっぱりイタリア車に?
山本:
ラテン系なんですね、基本的に。現場に行くのは小回りが利くからバイクの方が良いんですけどね。・・・なんとかしなきゃ。
鄭:
バイクは乗りはじめて、長いんですか?
山本:
もう16才から乗ってますからね。気がつけば20年以上という感じです。23年?
建築と車の関係●
鄭:
建築の方は車好きが多いですね。なにか惹かれるものがあるんでしょうか?
山本:
車もデザインが重要なファクターですよね、で、建築と違って動くものでしょう。その辺でバランスをとっているのかも知れないですね。
小林:
ある意味動く部屋という感じなのかな。
山本:
そう、そういうのもあるし、仕事しててストレスを感じるときがあるじゃないですか、そんなとき車に入ると、あー俺の空間って感じで。
鄭:
ああいう距離感にあるものって、建築ではなかなか作れないですよね。
山本:
「部屋です」って言われると困っちゃうけど、でも心地いいじゃないですか。
鄭:
割と体に近い距離にすべてのものが並んでいて、でもそれで圧迫感は感じないから・・・それはやっぱり動くからなんでしょうね。
山本:
360度窓がついてるっていうのもあるでしょうけど。
鄭:
車はそういう風に自分の部屋みたいな、っていうのはあると思うんですけど、バイクは違いますよね。
山本:
バイクは違いますね。一人になれるという意味では一緒なんですけど。世間とのつながりみたいなものは、おもいっきりストレートじゃないですか。季節や空気なんかを感じるという面白さがあるし、また町を眺めるというスタンスで見るとバイクやオープンカーがいいって事になりますね。
好きな事が仕事に絡む●
小林:
こういう自分の好きな事が一個あると、それに関連していろいろ。
山本:
割とくっついて来てますよね。
鄭:
宣言しちゃった方が良いのかもしれませんね。これが好きって、みんなにそう思い込ませてしまえば、好きなものに絡めて仕事もできるし。
小林:
こういう、「バイクと暮らす」というような事は、内心思っている人がいっぱいいるんでしょうね。
山本:
でも、バイク系の人はホントお金持ってないから。20代でバイク好きという人は、まずお金はないですね。
小林:
バイクにかけちゃうからないのか、もともとないのか、どちらでしょう?
山本:
両方でしょうね。結局ほんとは車に行きたいんだけど維持できないから、という人が実は多くて。そこからバイクにはまって行く人も多いんですけど。なかなか、厳しいですね。
鄭:
バイクを好きになるっていうのは、割とストイックな感覚ですよね。僕も乗っていて、乗っているのは面白いんだけど、なんでこんなに疲れるんだろうって思っていました。雨なんか降ろうものなら怖くてたまらないし。割と命がけな所もあるし。
山本:
360度窓がついてるっていうのもあるでしょうけど。
鄭:
車はそういう風に自分の部屋みたいな、っていうのはあると思うんですけど、バイクは違いますよね。
小林:
バイク雑誌にこういう建築の記事が載るっていうのは、珍しいですね。
山本:
そう、これは企画としてはなかなか面白いですよね。
それに、今度MOTONAVIっていう雑誌からバイクを借りるんですよ。MOTONAVI ARCHITECT STUDIOっていう連載企画をやる事になって、まだ始まったばかりなんですけど。社用車でドゥカティが一台あるらしくて、2日間貸しますからインンプレやってくださいと、言われて。「ラッキー!」と(笑)。
自分が好きなものから発して、たとえ回り道をしても結局そこに戻っていく。建築もプロダクトも車もバイクも、みんな山本さんのその姿勢を物語っていました。
私たちが帰りながらふと見上げると、夕焼け空に東京タワーがそびえていました。「あー、ここは都心だったんだ…」
聞き手:鄭、小林(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

クレジットのない写真はすべてキャベッジ・ネット撮影
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