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生活普段議 
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第28号   山田 敏博さん  「コミュニケーションすることが好き!」
今回訪ねたHUGの山田さんとは、以前事務所をシェアしていたこともあり、気心の知れた仲です。お互い西の方の出身ということもあって、インタビューもいつもとはすこし違った雰囲気に。関西弁のイントネーションで読むと、より臨場感が伝わるかもしれません。 今回のモノは、「生活普段議」初登場の「小説」から!
山田 敏博(やまだ としひろ)

1973年 福井県生まれ
1995年 関西大学工学部建築学科卒業
1995年〜1998年 山本理顕設計工場
1999年 一級建築士事務所HUG設立
今回のモノ
 
まずはモノ選びから●
鄭:
なにかモノを用意してもらえました?
山田:
考えたんだけど、シャーペンとか…。でも、なんかあんまりおもしろくないかなと…。頼むよ、インタビュアー。引き出してよ、俺の天才的なところを!(笑)
鄭:
んー、そうだ小説は?まだ書いてる?
竹下:
え、山田さんは小説家なんですか?
山田:
小説家ではないけど。小説では1円も儲かってないから。でも、今年も書こうと思ってて…。
鄭:
じゃあ、今回は小説でいこう!
山田:
まるで本気で書いてるみたいで恥ずかしいな(笑)
突然「小説」●
鄭:
去年かな?突然「小説を書いた」と、見せられたんだけど、書くきっかけがなんだったのかは、きいてないと思うけど?


山田さん執筆の小説
>PDF Download

「山田 未」はペンネーム
山田:
そうだね。本当の理由は…、まぁ失恋がきっかけです(笑)
鄭:
普通は、失恋したからって小説を書こうっていう風にはならないよね?日頃から歌を作ってた人が、ふられた思いを歌にぶつけるっていうなら、分かるけど。
山田:
そうかなー?ほんとは、昔から小説は書こうと思っていたけど、きっかけがなかっただけかもしれない。書いてみて、書くことがすごく好きだ、っていうことは分かった。巧いかどうかっていうと、たいして巧くはないと思うけど…、書くのは気持ちがいい。気持ちよさは建築とは逆かな。
鄭:
逆?
山田:
つくっていく過程で、小説は小さい気持ちよさが積み重なっていくんだけど、逆に建築は小さいストレスがたまっていく感じ。(笑)小説は蓄積系なんだね。建築はなかなか出ないのを積み重ねて、ある時スパーンて抜ける。建築は爆発系。
鄭:
蓄積していく気持ちよさが好きだった?それは、意外な…。爆発系が好きなんだと思ってた。(笑)
山田:
僕は、何かと「コミュニケーションすること」が好きなのかも。小説は、それがストレートにできる。僕が、おもしろいことを思いつく時は、誰かとしゃべってる時とか、文章を書いてる時とか、何かしらコミュニケーションをしてる時なんですよ。そうじゃない時はほとんど何も思いつかなくて、悶々としてるだけ。建築のときもそれは変わらない。
鄭:
文章を書くのが、「コミュニケーションしてる」に入る?
山田:
はじめはなかなか書けないけど、だんだん乗ってくると、なんとなく誰かとしゃべってるみたいになる。誰かに話したい、と思って書いてるからかもしれない。そういう時の方が、おもしろいことを思いついたりするね。だから、僕にとっては、文章を書いたり人と話したりすることが、栄養なのかも。誰ともコミュニケーションせずに生きてると、たぶん何も出てこないと思う。スタッフにも、「仕事中ずっとしゃべってるから、うるさい」って言われた(笑)
鄭:
文章を書いてると、乗ってくるっていうのはわかるなー。
山田:
誰かとしゃべっていても、次第にグルーヴしてくることあるよね?はじめに考えてたことと違う方向に行きはじめて、どんどん自分の気づいてなかった言語が出てくる感じ。自分で話してて「あれ、僕ってこんなこと考えてたんだ」って驚いたり。書いててもそうかもしれない。
鄭:
思考が会話に依存してるのかな?
山田:
正直それはあるかもしれない。書いてるときに声に出したりしてないけど、声が好きっていうのもある。言葉そのものにも意味や価値はあるんだけど、しゃべり方によって言葉の意味なんて変わっちゃうでしょ?「好き」って言ってももちろん伝わるけど、「嫌い」って言っても、言い方によっては「好き」って伝えられる。だから、会話には、言葉の意味そのものより、タイミングとか表情とか言い回しとか、いろんな要素が入ってると思う。しゃべってる時にグルーヴしてくるのって、その会話のニュアンスにグルーヴしてくるんじゃないかな。そういうのが、けっこう好きなのかもしれない。だから知らない人としゃべるのも、すごい好き。
事務所探訪●
竹下:
この…ペンネーム「山田未」、何て読むんですか?
山田:
「ヤマダマダ」(笑)縦に書くと、シンメトリーな名前。
鄭:
なんで「山田未」にしたんだっけ?
山田:
名付け親は、この事務所の上を使っている内海さん。語呂がいいからって。 (内海さんは「生活普段議第6号」に登場しています。ぜひ、ご覧ください。)
鄭:
内海さんが入る前は、僕が使っていたんだけど、裏には広い庭があって、ここはいい事務所だよね。
竹下:
古いんですか?
山田:
築40年くらいかな。木造だけど、まだまだしっかりしてる。
竹下:
ここに、住んでいるわけじゃないんですか?
山田:
住んでるのは僕一人。家で仕事してるというよりも事務所で寝てる感じかな。 庭には、柿の木があったりして…。なんだか建物探訪みたいになってるな(笑)
鄭:
そういうのも、いいね。
山田:
食べづらいくらい小さい柿の実が、いっぱいできる。熟す前に少し採って数を減らしておいた方が大きくなるんだろうけど、放っているから小さいのしかできない。わりと甘いんだけどね。
かわいい折りたたみ自転車「STRIDER2」●
鄭:
そういえば、自転車があったでしょ?捨てた?


STRIDER2
山田:
物置に入れてあるよ。「STRIDER2」っていう、かわいい自転車なんだけど、壊れちゃったんだよね。4年間くらい乗ってたんだけど…。折りたたみできて、乗るときはフレームが三角形になる。 (倉庫から出してきてもらいました)
竹下:
すごい!大道芸人みたい…!
山田:
パンクしちゃってるけど、かわいいでしょ?これはチェーンがゴムのベルトになってて、折りたたむ時に手が汚れたりしない。
竹下:
普通の自転車屋さんに売っているんですか?
山田:
これはネットで買ったの。普通の折りたたみ自転車は、車に乗せるために折りたためるようになってるんだけど…。これは電車に乗る用だから、こうして、折りたたんだ状態でも、押して移動できるんだよね。 普通の自転車と違って、後ろのタイヤの方に重心があるから、普通の乗り方では乗れないんだよね。体を預けないと。
鄭:
スポーツバイクとアメリカンバイクの違いみたいなものだね。
竹下:
じゃあ、こぐのがキツいんですか?
山田:
いや、けっこう体重が乗りやすいんだけど、真下に体重を乗せるんじゃなくて、回転軸に乗せる感じ。乗ってみるとおもしろいよ。
鄭:
わりと遠くまで行ってた?
山田:
10kmくらいの距離は、行ってたんじゃないかな。ママチャリよりは走りやすい。
鄭:
たたんで、電車に乗ることは?
山田:
何回か乗ったなー。これは街中で本当に目立つよ。子供からおじいちゃんまで、すごく話しかけられる。
鄭:
「なんですか、これは?」…みたいな感じで?
山田:
「えらい自転車乗ってるな?」って。(笑) お気に入りだったんだけど、直すには修理代が結構かかるからね。でも、倉庫から出したら、また欲しくなっちゃった。
中目黒のテナントビル●
鄭:
最近の仕事は?
山田:
中目黒でやったテナントビル。10月に竣工しました。
鄭:
中目黒のどのへん?
山田:
青葉台なんだけど。目黒川があって、山手通りがあって、目黒川から50メートルくらい上がったところ。代官山に上っていく道の突き当たり。
鄭:
テナントは?
山田:
1階がブティック。2階は工事中なんだけど、スープカレー屋さんが入る予定。3階はラムしゃぶ屋さん。ラムしゃぶは食べに行きましたよ。スープカレー屋さんができたらスープカレーも食べに行くかな。 3階には屋上に行く階段があって、屋上も3階の店舗として使ってます。
鄭:
ガーデン・ラムしゃぶ?
山田:
屋上にテントみたいなのがあって、ラムだからモンゴル風らしい(笑)
鄭:
地下もあるね?
山田:
地下はまだテナントが決まってないんじゃないかな?
鄭:
そこに事務所入れば?
山田:
まー、高いから。(笑)そんなリアルな話、載せないでよ。すごい「売れっ子」だとアピールしないと!
無意味な方法論●
鄭:
デザイン的には、箱にリボンを巻いた様な感じだね。


FLEG中目黒
photo:HUG提供
山田:
外側に見えてるリボンのような黒いフレームは梁なんだけど、この梁は50mm×100mmのスチールの角パイプを両側から9mmのプレートでサンドイッチしてあるもので、梁の厚みが68mmしかないんです。かなり薄い構造体。同じ形式のものがガラスの奥にも縦に入ってて、それが柱になってる。その梁と柱の両端には直接ガラスが差し込まれていて、そのまま外壁になっているんです。中には柱梁は無くて、一見構造体がない建物に見える。外壁のようで構造体。で、構造体のフレームは、いかにも構造体というふうに見えないように、ランダムに配置している。
鄭:
ランダム?
山田:
そう、すごい適当。フレームには3種類の幅があって、それを適当に建ててる。あるいは適当に建ててると思われたい。現実的には、合理性がないと建たないんだけど、その中に合理的じゃない要素も入ってないと、つまらないんじゃないかな。建築はシステマチックじゃないと面白くないと思ってるんだけど、どこかでそのシステムから解放されていないと美しくないとも思うんです。あえて言うなら「無意味な方法論」みたいなのが混じってる感じ。
鄭:
ここでの「無意味な方法論」は?
山田:
何もない。
鄭:
何もないと位置は決められないよね?
山田:
なんとなくで色んなパターンを作ってみて、「どれが一番かわいいかな」っていう決め方かな。「こういう無意味さ」っていうルールを作るんじゃなくて、いっぱいバリエーションを作って、それを並べて見た時に、どれが一番良さそうに見えるかっていうぐらい。
鄭:
かわいさとか、フレームのランダムさ、っていうところで?
山田:
そう。原因から結果は導き出されるものだと、みんな思い込んでるけど。本当は、結果を知ってから人は原因とか理由を欲しがるんじゃないかな。例えば、電車でおばあさんに席を譲って「大きなお世話です」と言われると「なんで怒るの?」と思うけど、「ありがとう」と言われて「なんで感謝するの?」とは誰も思わないでしょ。もしかしたら、原因はうまくいかないものにしか存在しないんじゃないかなと。気に入らない結果が目の前にあると、「あのおばあさんは性格が悪いんだな」とか「昔そうやって騙されたのかもしれない」とか無理にでも原因を作らないと不安になる。だから、実は、原因と結果は順序が逆なんじゃないかと思う。
鄭:
結果が良ければ原因も良いはずだと、思い込みがちだね。
山田:
だから、なんとなく「良い」って思ったら、たいした理由や意味なんてない方が、あやしい感じが残るかなと思って。おもしろさってそういうことなんじゃないかな。
鄭:
柱の建て方の他に、「無意味な方法論」は?
山田:
フレームには、200と450と800ミリの3種類の幅があるんだけど、これも実は適当。もちろん構造計算して大丈夫だ、っていう裏付けはあるんだけど。なんでこの幅なのかっていうのは特に理由はなくて、なんとなくでしか決めてない。
中と外の良い関係●
山田:
このフレームは中から見ると、内に縦のラインがあって、外に横のラインが見える。中からだと、縦横逆転した風景かな。
鄭:
かごみたいな感じ?
山田:
そう。立体的なチェック模様みたい。
鄭:
包み紙みたいだね。「中身は何でもいいから包んじゃえ」っていう意識はあった?
山田:
テナントビルだから、っていうのも当然あるけど、中身に依存した建築があんまり好きじゃない、っていうのはあるかもしれない。外は外だけで成立するんじゃないかって。そういうデザインの強度が必要なんじゃないかなと思う。
鄭:
そういう意味ではテナントビルは最適だね。
山田:
そう。だけど、最近はリノベーションとかっていうこともあるでしょ?中身がこうだからってことだけで設計しちゃうと、中身を替えられると、おもしろくなくなっちゃう。そういうことでは壊れないものって何だろうと考えると、それは構造体とかそういうもので作られるキャラクターなのかなと。そのキャラクターを壊そうと思ったら、建物ごと壊すしかないでしょ?
鄭:
デザイン的に場所に配慮したっていうようなことはない?
山田:
まあこれが青山だったら無理かっていうと‥
鄭:
まあ青山を出されると、中目黒も青山もわりと近い様な感じがあるけど。
山田:
だからそれぐらいでしか考えてないね。周りの建物とのボリュームとかは、高さをもうちょっとおさえるかとか、そういうのはあるけど、デザイン的にはなんとなくぼんやりその辺って感じ。なんとなく今時の街みたいな。
鄭:
これは外だったけど、全く逆のこともやってるでしょ?中だけっていうのも。
山田:
これまでは、たまたま中だけとか外だけというのをやって来て、中と外がリンクするのが素敵だ、というわけでもないと思った。リンクしてもしなくてもいい、ぐらいな方が実はどっちも自由に作れるんじゃないかな。中と外の依存関係が強いと、結局お互いの首を絞めるだけで、おもしろくならないんじゃないか。お互いが相手のせいにしないのがいい。建築を作る人は、中も作りたがるでしょ。そうじゃなくて、外だけしか作れないからこそおもしろくなった、というやり方が出来るといいな。
鄭:
それは場所的というより、都市的な感覚だね。都市の中の建築って外と中の関係が常に一定じゃないことが多い。
山田:
そうだね。都市的ってまさにそういうことなのかもしれない。
幻想を証明する力●
鄭:
今後の活動でも、そういうテーマに取り組んでいく?
山田:
そうね。なんとなく、今気になっていることは、さっきの「無意味」っていうことと、ちょっと繋がってるかな。つまり、矛盾してることが美しいんじゃないかと。矛盾そのものというか。例えば、一番悲しそうに見える顔は実は笑顔だったりとか。物事を知れば知るほど、自分の無知に気付くとか。「絶対的なものはない」という言葉が絶対的でなかったりとか。観念的すぎて難しいけど、建築も矛盾を内包する作り方が出来ないかなと考えてます。
鄭:
建築で矛盾ていうと?
山田:
建築そのものではなく、建築を作っていく時の考え方に矛盾を混ぜたいのかな。山本理顕さんも前におっしゃってたけど、建築って幻想を物理的に存在させることによって社会の仮説を証明してしまう存在なんじゃないかな。「福祉施設ってこういうもの」っていう幻想が世の中にあって、その幻想をそのまま与条件にして建築を建てちゃうと、まるでそれが幻想じゃなくなって、現実になっちゃうみたいな。建築にはそういう怖さっていうか、力みたいなものがある。世の中にある幻想を現実化してしまう力が。
鄭:
それは、確かにあるね。それを、自覚的にやれるかどうかが、建築家の力量なんだろうと思う。
山田:
世の中にあるいろいろな概念って、ほとんどが幻想だと思う。で、実は幻想っていうのが簡単な論理すぎて矛盾が内包されていないことが多い。でも、矛盾みたいなものが混じってる方が真実に近い気がするんです。だから、幻想を疑って組み立て直すだけでなく、そこに心地いい矛盾を混ぜていければいいかなと思ってます。
山田さんは、普段から非常に論理的に物事を理解・分析しようとする一方、シニカルなものの見方がユニークだといつも感心させられる人物です。実際に話してみると、大変なエンターテイナーで、いつも場を盛り上げてくれます。今回も、紙面に書ききれない小ネタいっぱいのインタビューになりました。山田さんの話のおもしろさは一度体験してみるべきかも?
「小説は個人的な楽しみのためだけに書いているわけではない!」という山田氏のいさぎよさを尊重し、今回は山田未氏の処女作である短編小説をダウンロード(こちらから)できるようにしました。興味のある方はぜひご一読を!
聞き手:鄭、竹下(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

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