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生活普段議 
www.cabbage-net.com/seikatsu/
第31号   八木 敦司さん  「噛めば噛むほど味が出る」
今回は、八木敦司建築設計事務所の八木さんを訪ねました。八木さんのモノは、宗教観や思想観に影響を与えているという手塚治虫の「ジャンピング」。八木さんが講師をされている東京電機大学の学生さんも巻き込んで、いつもとはひと味違ったインタビューをお楽しみ下さい。
 
八木 敦司(やぎ あつし)

1968年 東京都生まれ
1992年 東京大学工学部建築学科卒業
1992-1996年 入江経一+ power unit studio
1997年 八木敦司建築設計事務所設立
2001年 高層木造研究会(POWS)に参画
2002年 スペースデザイングループY.H.D立ち上げ
2005〜年 東京電機大学デザイン特命講師、武蔵野美術大学非常勤講師

八木敦司建築設計事務所のURL
www003.upp.so-net.ne.jp/yagiarchitects/
今回のモノ
 
マンガ●
八木:
最近手塚治虫の「ジャンピング」っていう、ずっと前に夜中のテレビで見てすごくおもしろかった短編の映画を思い出して、Amazon.comで買っちゃったんです。
60年から88年くらいまでの手塚治虫の短編の作品がいっぱい入ってて、すごくおもしろい。僕の「ジャンピング」の記憶は、ボールみたいなものが目を持っててジャンプしていくんです。そうすると、ビルとかに登って、空に行って、雲を抜けて、下を見てもう1回帰ってくる。すると、違う時代に行っちゃって、そこで戦争が起こってて、次は違う場所だったり、っていう感じだったんですよ。それを見た頃、ジャンプって動きだけで、時間も場所も超えて、何かを表現するって、すごいなーと思ってたんです。アーティスティックな感覚みたいなものを感じたんですよ。
マンガとかは、意識してないとアーティスティックなことだと思えないじゃないですか。だけど、実験映画って形だったんで、「こういうのを“表現”というのか」と思ったわけですよ。


「ジャンピング」が収録された
手塚治虫実験アニメーション作品集DVD
鄭:
手塚治虫さんて、実験作品を初期の頃から作ってました?
八木:
みたいなんですけど、僕はこれしか覚えてなくて。
鄭:
いろんな所でバラバラに見た記憶はあるんですけど、「ジャンピング」は記憶にないなー。
八木:
火の鳥も大好きで、小学校くらいの頃に親父が買ってきたものを読んでて、世界観がすごいじゃないですか。輪廻転生というか。そういう世界があるんだなーと思って。わりと自分の中の宗教観とかに影響を与えてるなって最近思い出して。
鄭:
子供の頃に手塚治虫さんの作品を読んで初めて知ったことっていうのは、結構ありますよね。仏教感であるとか、古い日本の歴史とか。僕は「アドルフに告ぐ」を読んで、初めてドイツのナチスのことを現実味として理解した記憶があります。そういう経験してる人って多いのかなって思うんですけど。
八木:
それは僕も同感ですよ。
鄭:
初めて触れるものを、分かりやすく見せてくれてる。
八木:
メッセージがすごいストレートじゃないですか。逃げない感じで、でも悲観してるわけじゃなくて、ありのまま見せていて。そういうところが、コミックとかアニメを本物にしたなーと思って。
例えば、「アキラ」も好きなんですけど、あの世界観は手塚治虫だよなーって思ってたんですよ。読んでてふと気が付くと、手塚治虫に捧ぐみたいなことが書いてある。最後に、アキラと鉄男が融合してゼロになるでしょ?陰と陽がゼロになるみたいな感覚は、やっぱり手塚治虫で知ったような、日本的な感覚かもしれない。そういう世界観を出したいというところが、「やっぱ手塚治虫かー!そこに戻る?!」みたいな感じですよね。
鄭:
結局手塚治虫さんが出発点なんで、いろんなジャンルを見ても、プロトタイプを手塚治虫さんが作ったものって、多いんじゃないですか。
八木:
天才だとは思うんだけど、あくなき欲求というか、表現しなきゃみたいな執拗さがすごいなと思っていて。普通諦めちゃうのに、諦めないでどんどんやっていっちゃうところがいいなと思ってるんですよね。普段こんなに賞賛とかしてないんですけど、たまたま1、2週間前にそんな縁があったんで。
鄭:
手塚治虫さんの作品はけっこう?
八木:
結構読んでますかね。「ブラックジャック」や「ブッダ」は読んでます。全部は読んでないと思いますけど。一時期ブッダが置いてある喫茶店があって、ブッダ読みたさのために喫茶店行ってコーヒー飲んでた。(笑)
鄭:
マンガは手塚治虫さんに限らず?
八木:
読みますよ。モーニングとか読んでます。最近だとかわぐちかいじとか、「バガボンド」とか。松本大洋はけっこう好きですね。あとは、「攻殻機動隊」のアニメに凝ってビデオシリーズ全巻制覇しました。うちのかみさんも巻き込んで。(笑)最初に向こうで絶賛された映画版を見て、「なんだ、おもしれーなー」と思って、シリーズもばーって見て、ちょうどその頃にシリーズ2をやっててシリーズ2も追って見て。わりと僕はアニメから思想観みたいなのを吸収しちゃったりするんですよね。
鄭:
思想観があるということは、けっこう日本のアニメ独特じゃないですか?有名なところでは「エヴァンゲリオン」とか。
八木:
だけど僕、それは見てないんですよ。「エヴァンゲリオン」もそうだけど、社会現象的になると、義務感を感じちゃうじゃないですか。そうすると大抵見ないですね。
鄭:
でもそれいいですよね。僕も「エヴァンゲリオン」が流行ってた時期は見ろ見ろって言ってたんですけど、その理由は、ブレークする前から知ってたから。(笑)なんか流行に乗せられちゃうと冷静に見れないっていうか。
八木:
だから「攻殻〜」なんてよく見たなと思ったんですよ。知ってたけど、ずっと見なかったから。見てみたらはまった。シリーズの方は、副題が「スタンドアローンコンプレックス」っていうんですよ。「攻殻〜」の内容は、それぞれ独立した個人が、同じ目標に向かって違う手段を講じてやるみたいな話で、ベタなんだけど、意外とありなんだろうなって感じたんです。実際も共同作業ってなると、情報が多すぎてまとめきれない。だからあるところだけ決めといて各々が自由に動いて、結果が出たものがぽーんっていけばいいんじゃないのっていう価値観はいいなと思って。
大学のカリュキュラムでも、そういう考えで作った方がいいと思うんです。系統立てていくよりは、からっぽの箱のようなものを作ってあげて、それに対してどうするかっていうほうがみんなが動きやすい。それはスタンドアローンコンプレックスから来てたりする。
教育●
鄭:
今教えてらっしゃる大学は?
八木:
常勤で行ってるのは、東京電機大学です。「デザイン特命講師」っていう、特命捜査官みたいな名前なんです。(笑)研究室とかはもっていないんで、僕はフリーエスキス部隊と呼んでいるんです。学生に近いところで設計を見てあげる。もしくは、設計だけじゃなくデザインという名前で、もうちょっと広く見てあげるっていうような。
鄭:
最近の学生さんはどうですか?
八木:
いまそこに、学生がいますよ。話を聞きますか?
(八木さんの事務所でバイトをしている東京電機大学の鶴橋さんにもお話を聞いてみました。)
鄭:
今の学生さんって、ぼくらの世代とは全然違う環境で建築を目指し始めてると思うんです。今は、建築をやろうっていうのはマイナーな志じゃないかと思うんです。

右:鶴橋さん(学生)
八木:
他の建築やっていない友達と比べて、自分ってどんな感じ?
鶴崎:
学校が始まっちゃうと、忙しい。文系の友達とかは、結構遊んでるんですけど、僕たちはそうはいかなくて。友達とは結構そういう話ばっかりして。
八木:
遊びたい、って話?そうだよな、それは変わらない。なんで俺達は、こんな時間が無く建築ばっかりやってんのみたいな。
鶴崎:
周りの反応は「忙しいんだなー」て。でも最近いろいろ建築で事件があったので、話題に上がってるんです。他には、建築のテレビ番組とか。それで、「建築家」っていう名前は知られているんですよ。「将来有名になったら、家よろしく」とか。
八木:
それは、悪い気はしない?
鶴崎:
悪い気はしないですね。
八木:
その辺は変わらないな。僕なんかは高3の時にどういうことをやりたいか探して、建築の設計いいなと思ってさ。それまでサッカーをやってたから、体育会系のノリで「これだ!」って感じで来たんだよ。でも、今はそういう子っていうのは少なく感じるんだけど、そうではない?
鶴崎:
多分、少なくなってるとは思います。正直なんとなくといえば、なんとなくですね。今はやってて楽しいんですけど、どんな仕事をするのかは分からなくて、漠然と建築家ってカッコイイというのがあって。
八木:
そこなんだけどさ。たぶん、僕らのころは、建築に進むというのは、進みたくて進む感じなんだよね。特殊な感じがするから。“なんとなく建築”ってどういう感じ?

鶴崎:
まず、高校の時、理系に行くか文系に行くかで、理系に行ったんです。化学が全くできなかったから、物理と数学と英語が基本になって…。
鄭:
自然と工学系になる。
鶴崎:
僕は、絵を描くのがずっと好きなんですよ。小さい頃は、絵描きになりたいと思ってたんで、そっちの方をやりたかったんです。それで、職業を調べていくと、工業デザイン系か建築かに絞られて。工業デザインって漠然としてるけど、建物だったら分かりやすいし、建築家って言えたらカッコイイかなって。そういう感じでしたね。
八木:
絵を描くのが好きなのは僕も一緒。そういう意味では、設計に来てる人は、昔から絵が好きな人は多いかも知れないですね。それは今でもそうかも知れないな。
鄭:
建築って、絵を描くのとはずいぶん違う考え方をしなければいけないことが多いと思うんですけど。
鶴崎:
建築は、敷地が決められていたりするけど、絵はそんなのはないじゃないですか。それがあるから、面白くなっていけるのかなって。
八木:
なるほど、条件ってやつだな。
そこで「最近の学生は?」っていう質問に戻ると、僕自身が思ってるのは、まず自分がこれをやりたいっていうものがあればいいと思ってるのよ。例えば丸が好きとかね。丸が好きだから、丸が合うかどうか考えるみたいな。そういう風になっていくと、条件も違った見方ができるようになる。みんな、そういう欲求が少ない気がするんだけど。
鶴崎:
1年とか2年の時は、なにをどうするかっていうのが分からなかったから、敷地の形とか、隣の家との間隔とかから考え始めてたんです。今はこの形がつくりたいけど、この敷地には入らない…じゃあ、どうする?みたいな感じになってますね。
八木:
そう、そうなってくれるといいなと思うんだよな。というのはね、“良くできた”作品が多いんですよ。でも、僕らが見たいのはそういうのじゃないわけ。学生なんだからさ、未完成な部分が一番面白いわけじゃない?うまくまとめてあると、褒めてる一方残念な感じ。でも、荒削りでしょうがないんだけど、これがやりたかったんだねってのがあると、「すごくいいけどもう少しここはこうした方がいいんじゃない?」って言いたくなる。そういう、モチベーションの掛け合いが一番いいコミュニケーションで、僕はそれを求めている感じだな。
建築家の職能として、物事をまとめる能力って絶対必要じゃないですか?それはあってしかるべきで、うまくやれていることは間違いじゃないんだけど、そこだけになっちゃうと、ものづくりの領域に行かないところで止まっちゃって、つまんなくなっていくと思う。だから、両方を学生時代に身につけるといいですよね。
鶴崎:
ごもっとも。
一同:
(笑)
鄭:
まとめる能力は心配ないですね。
八木:
これくらいで、開放してあげましょうか。
(八木さんのインタビューに戻る)
鄭:
教えているのが楽しそう、と思ったんですけど、教えるのは好きですか?
八木:
好きですね。熱いんで自分は。愚直に答えてくれると、嬉しいし、吸収して伸びて行ってくれるのを見ると、快感だし。
鄭:
建築への危機感みたいなのはあります?建築教育への危機意識みたいなものは?
八木:
僕はそういう考えじゃないんですよ。昔から、みんなが根源的におもしろいなって思うことが、育ってく過程で、体感できなくなることがあると思ってるんですよ。だから僕は学生にできるだけそこに気付かさせてあげて、変に凝り固まっちゃうんじゃなくてなんでも吸収してという状態を作りたいだけなんですよ。ゆるい順序みたいなのはありますよ。でもそれよりはモチベーションみたいなことが必要なのかなと思って。建築に来た子が、物づくりとか、出来上がった達成感とか、そういう所をもっとちゃんと感じられるように。
COCO●
鄭:
これ(プライウッドキットハウス2001)はセルフビルドのプロジェクトですよね?


プライウッドキットハウス2001
photo:
八木敦司建築設計事務所提供
八木:
実はこれを作ったのは随分前なんです。ロの字型のフレームがあって、そこにパネルを付けるだけで出来てるんです。
鄭:
こういうのをやってみようと思われたきっかけは?
八木:
1000万円しかなかったんです。普通に安く作ることもできるんですけど、1000万円だけどおもしろくて、喜びがあるものと考えて、自分で手作りするログハウスの新しいタイプのものを考えてみることにしたんです。うまくいけば、どっかが乗ってくれて商品開発的な意味でちょっと値段が安くなるんじゃないかと考えて。でもその時はうまくいかなくて、結局普通の工務店が作ったんですけど。
これ(プライウッドキットハウス2001)は合板でやっていて、たまたま知り合った集成材メーカーに話をして、杉の集成材バージョンを開発することになったんです。今日それのHPが出来たってメールがきましたよ。
(インタビューの日にココのサイトがオープンしました。)
鄭:
これは…、「ココ」?
八木:
ココ。この名前は僕が考えたんですよ。ココって響きがかわいいでしょ?木材屋の人が、ロの字とコの字で出来てるっていう意味で、「ロコっていうのはどうですか?」って言ってきたんです。「そうか、じゃあココがいいんじゃない?」って言ったんです。コが2つでロなわけだから。
鄭:
ココは、セルフビルドできるって書いてあるんですけど、実際に自分でも建てられる?
八木:
建てられますよ。サッシは既製品をうまくはまるようにしてあって、キットと一緒に梱包に入りますし、床、壁、屋根は、1m幅のパネルをロの字フレームに対して、ビス留めするだけですから。ただ、ちょっとした足場は必要かも。
鄭:
フレームいくつ、パネルいくつ、っていう風に買えるんですか?
八木:
買えます。今の感じのデザインでいくと、3スパンに1個壁があればいいよって構造設計の人に言われてるんですよ。大きくなっていくとまた分かんないですけど、だいたいそのルールの中で、自分でコーディネートしてもらって、作ればいいだけの話なんで、非常に簡単ですよね。プランを十字形にしてもいいし、L型にしてもいいし。地方とか、プレハブハウスみたいなの買って子供部屋にしてたりするから、そういうのに取って代わればいいなと思ってるんですけどね。
鄭:
これだったら、ちょっと狭いからこっちに増やす、っていうことも可能なんですよね?
八木:
そうですね。とっても大きな柱のない空間を求められると大変だけれども。
オレクサハウス●
鄭:
これ(オレクサハウス)は住宅ですね?構成がよく分からないんですが、どうなってるんですか?


オレクサハウス
photo:鳥村鋼一
(ナカサアンドパートナーズ)
八木:
写真じゃ分かりにくいんですよね。僕としては最終的にはここが木陰の空間みたいに感じてもらえればいいかな、と思ったんですよ。これは現場に行って空間を体験すれば分かるんですけど。
鄭:
たぶん、お施主さんもどうなるか分からなかったと思うんですけど。
八木:
まあ模型は見てますけどね。よくやらしてくれたなと思います。非常に気に入ってくれてますよ。いい“囲まれ感”があって、でも明るいねって。木陰とか草の間とかあるじゃないですか。ああいう感じにしたかったんですよ。けっこうキューブとかが多い中で、もっと人間が根源的に気持ちよさを感じられる空間を作った方がいいんじゃないかと思ったんですよ。
鄭:
光の入り方がいいですね。
八木:
僕、ある程度は予想しましたけど、かなりの部分は野放しにしましたね。それは経験上、あんまり計算しすぎるとうまくいかないので。出来てから、光の回り方とか、発見できることもあるだろうと思って。
鄭:
最近の建築って、開かれてるっていうことをすごい重要視されてて、中と外の連続性とか、中にいても外にいるみたいな感じが強いなと思ってたんですけど、これはもう中にいることが気持ちいいって感じですよね。
八木:
区切られていれば、ある意味空間性みたいなものを持つじゃないですか。だから開放感っていった時に、全面ガラスにすればいいのかっていうと違うんですよ。オブジェクトの中にいるっていうのは変わらなくて、それよりは光の量は少ないけど、なんとなくパラパラっと固まった存在の中にいると、中にいるか外にいるかなんてどうでもいいかみたいな。そういう連続感だと思うんですよ。
津田:
僕は解放されすぎると逆に外を意識するから、それがストレスになるんですよね。
八木:
たぶんそれは、全面ガラスにすることによって、中と外をすごく意識化させてるんですよ。開いてますよって言ってる。それはとっても人間の知性的な作業なわけです。だからそれもいいけど、もっと単純に、人間は外とか自然との一体感を形を通してしか得られないので、それをどうできるか、という感じではありますよね。
津田:
光に色がある感じですよね。室内にいて、いろいろ表情が出るっていうのはすごいと思いますよね。
八木:
すごい単純なことなんですよ。東西南北にちょっとずつでもいいから光をとってあげるってことと、形を決める時に方向を意識しすぎないようにやっておくことで、草の重なってる感じってでると思うんですね。チラチラとこの辺の意識下にあって、感じてるわけですよ。その感覚はすごくいいんじゃないかなと。
かけがえのない風景●
鄭:
最近の建築物って、わりと住む人に放り投げてて、「生活を楽しむのはあなただから、箱は作りましたよ」みたいな感覚って増えてるじゃないですか。でもこれはそうではなくて、中に何も置いてなくても、楽しんでいられるなって感じがして。
八木:
それって僕にとってはすごい褒め言葉であったりして、“かけがいのない風景”ってベタな名前を付けてるんですよ。機能性とかいろんなことを超えて、「これが好きだ!」って言えるものになると、それを大事に守っていこうとするじゃないですか。建築はそういうのになれるはずだと思って、環境としての建築ができないかなと思ったんですよ。これを好きになってくれることが一番最初。癖はあるけど、噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな。
鄭:
建物を作ることって、あるところから先はどうせコントロールは出来ないんだし、そこからは建築家が入っていくのもおこがましい、みたいな空気が漂い始めてる感じがしますよね。
八木:
クールに知性的にまとめることがいいみたいな。
鄭:
僕が建築を志すきっかけになった建築ってそうではなくて、なんかそれを見てるのが楽しかったですよね。最近、建築の新作とか見てても、そういう感覚が抱けない。
八木:
ぐっとこないみたいなね。それは僕も思いますよ。
鄭:
それはやっぱり八木さんのおっしゃることが欠けてるというか、根本的に放り投げちゃってるっていう感じがしますね。
八木:
たぶん昔の建築家は普通にそれを言ってたと思うんですね。でもいつの間にか、そういうことを言うのが、ちょっと恥ずかしいみたいになってきてますよね。でも振り返ってみると、すごくいいなと思うものは、くさいけど「空間にスピリット」とか「神が宿ってる」とか、そういう「ある建築の空間が残ってく要素」ってあると思うんですよ。それについてやらないと、僕が設計やってる意味がないと思って。癖があってすごいけど見てみたいな、という設計ができた時に初めて、空間と場所と人間が、全部うまい方向にいくかなと。要するに、機能も思いっきり求めていいけど、機能だけじゃなくて、「ただこれがあるから!」っていうものがあると、すごくいいのかなって思ったんですよ。大事にしたいと思うだろうなって。
鄭:
そういう意図が伝わってきます。久しぶりに、写真を見ただけでは分からない、実際に見てみたいなと思わせる建築ですね。
八木:
ありがとうございます。嬉しいです。僕も住みたいなと思いましたよ。(笑)
鄭:
今後の建築の仕事としても、そういう要素はやっぱり?
八木:
僕ね、スタイル決めないでいろんなことやるのが好きなんで、いつも違う感じですね。それで苦労してますけど。(笑)スタイルがあればそのスタイルが好きな人が頼んできてくれるけど。こういうおもしろいこと出来るんだって思ってくれる人じゃないと頼みにくいんだと思う。でもこれは、結構大事に思ってる感覚なんで、やっぱり継続してくと思いますね。違うことももちろんやりますけど。
鄭:
今後も「これがしたい!」っていう部分を表現していくような?
八木:
まあそうでしょうね。僕今37ですけど、40くらいまではいろんなことやって、その中で継続していけるものをいっぱい作っていきたいと思ってます。
私もデザイン特命講師の八木さんの授業を受けたい!このインタビュー記事を読んで、私と同じ気持ちになった人は少なくないでしょう。行列のできる設計相談所になるのでは?と期待しています。
聞き手:鄭、津田(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

クレジットのない写真はすべてキャベッジ・ネット撮影
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