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パークトレーディングス
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生活普段議 
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第33号   西田 誠司さん  「プラン1級!?」
今回は、「pla-n/プラン1級建築士事務所」の西田さんを訪ねました。西田さんの事務所は、多摩川の近くの静かな住宅地にありました。川に縁がある様で、川にまつわる話もたくさん出ました。
まずは、中学生の時に作ったという、文鎮の話からです。
 
西田 誠司(にしだ せいじ)

1967年 東京生まれ
1990年 早稲田大学理工学部建築学科 卒業
1992年 早稲田大学大学院(池原研究室) 修了
1992~98年 山本理顕設計工場
2000年 プラン一級建築士事務所 設立

pla-n/プラン一級建築士事務所のホームページ www.pla-n.jp
今回のモノ
 
手作り文鎮●
西田:
みなさんおもしろいモノをサクッと出されてますよね。
鄭:
そう見えるように、編集の段階で割と作られてます。
西田:
やっぱり?(笑)。僕は、ずっと前から重宝してるこの文鎮です。


西田さん愛用の文鎮
真鍮製
鄭:
あ!これ昔作りましたよね!
西田:
中2くらいの時に、技術家庭の授業で作りました。真鍮の丸棒をごそっと渡されて、最初にスケッチみたいなのを書いて、万力っていう機械でおさえて、平べったいヤスリでゴシゴシやりながら形を作るんです。つまみをつけて、最後に裏に名前をコンコンって彫って完成。仕上げに研磨剤で磨くと本当にピカピカになるんです。これがなんとなくずっと身近にあって、自分でもこの形が気に入ってます。
鄭:
よくとってありましたよね。僕は波形にした記憶があります。
竹下:
どんな形にするかは自由なんですね。
西田:
なんでもありです。
当時どうしてこういう形を作ったかっていうのは定かじゃないんですけど、後で振り返ってみて、元の丸棒の形を生かしながら、さらっとしたものができないかなという気持ちでやったと思うんです。あと、使い勝手が良くて、手になじんで、それでいて、スマートでシンプルなものと考えていた気がしますね。ネジを閉めるところが斜めになっててちょっと失敗なんですけど。
竹下:
つまみも作るんですか?
西田:
いや、つまみはパーツであって、それをどうはめてもいいんです。
鄭:
このようなモノはその後作ったりしてます?
西田:
いえ、してないですね。モノを作ったりするのは好きなんですけどね。このつまみはちょうどセンターに近い位置で、丸棒元来のアールは少し残してるんです。大げさな話ですけど、この丸棒が「どうされたいの?」っていうところで、「こうしたらどう?」みたいなふさわしい形を考えるって言うのは、結構建築でもその通りだと思うんです。
鄭:
それはこの文鎮を作る時にも考えてたんですか?
西田:
考えてないと思う。後でよく見ると、なんとなく考えてる風だなと。
去年初めて携帯をなくしちゃって、新しく買った携帯が、なんとなく文鎮に形が似てるんですよ。買ってから気付いたんですけど。
一同:
(笑)。
鄭:
こんな薄いのあったんだ。
西田:
そうなんです。ちなみに僕、爪も平べったいんですよ。踏みつけられたような(笑)。
鄭:
平たいのが好きなんですね。爪は現場で機械にはさまれたとかじゃないんですか?
西田:
生まれつきです。それぞれ関連はないんだけど、その類似性がおもしろいなと思って。
「pla-n/プラン一級建築士事務所」の由来●
鄭:
平たいと言えば、西田さんは平面(プラン)に対するこだわりが強いですよね。事務所名もプランだし…。
西田:
「pla-n」は、ハイフンがないと、平面とか計画っていう意味ですよね。辞書でplで始まる言葉を見ていると、placeとかplatformとかplanとか、場所とか空間を連想させる言葉がいっぱいあるんですね。nっていうのは、自然数で1、2、3、…って何でも突っ込める。そうすると、それだけの大きな器が作れるのかなと思って、そういった提案ができたらいいなという意味が込められています。プラプラしてるn(にしだ)っていう意味だったり…。単純に平面っていう意味ではないんですよね。プラーンって言う人もいるんだけどね(笑)。
鄭:
日本語の方には細工はしてないんですね。
西田:
そうなんですよ。本当はpla-nだけにしたかったんだけど、事務所登録する時に役所の人に「一級建築士事務所って前か後ろにつけて」って言われて、「う〜ん…後ろ」って。それで「プラン一級建築士事務所」。「プランが一級?!すごいプラン作るんだ」って言われたり(笑)
鄭:
それは間違ってはいないですよね!
川はながれる●
西田:
甥の誕生日に、岩波の「川はながれる」という、この絵本をプレゼントして、その後自分も欲しくなって買いました。川が生まれる時から海に出るまでの過程を描いた絵本です。川が人間のような気持ちで「次どこ行けばいいんだろう」とか、動物に「あっち行けば?」とか言われて、湖に出ちゃったり、街に出ちゃったりしながら、最後に海に出て終わりです。流れていく中で、先っちょだけの話じゃなくて、最初から全部ひっくるめて川なんですよ、っていうことを言ってるんですね。目的ばっかり見て焦らずに。
あんまりメジャーじゃないみたいなんですけど、本屋で片っ端から見ていって、ピッときたんです。子供の為っていうのもあるけど、自分がおもしろいから選んでるっていうこともある。


絵本「川はながれる」
鄭:
絵本って自分の好みで選んじゃいますよね。
西田:
それをその子に押し付けていいのかなとは思うんですけどね。こういうのもあるよっていう感じで。
鄭:
ずっと後になってから、こういうのもあったなって思い出したりしますね。
西田:
そうですよね。この絵の感じとか、色の組み合わせとかも。古いのか新しいのか分からない色味がいいですよね。
鄭:
絵本はよく読まれますか?
西田:
絵がベースになってて、詩がちょっと付いてるような、絵本と小説の中間みたいなのは、子供が生まれる前から読んでたりしましたね。子供が生まれてからは、子供の絵本を探すようになりました。たまに子供と一緒に寝る時には、長〜いのを読まされたりしますね。「ジュゲム」とか。
鄭:
子供って寝る前に本読むのがすごく楽しいみたいですよね。
西田:
途中で寝ちゃうんですけどね(笑)。
鄭:
うちにも本はたくさんありますか?
西田:
そうですね。子供が「これ欲しい」って言ったら、本なら割と何でも買っちゃいますね。
場所を作る●
西田:
川の話をもう一つすると、大学院の頃、塾のアルバイトをしていたんですけど、夏になると山梨県の道志村に合宿に行くんですね。神奈川の真裏で、丹沢のちょっと奥、山中湖のちょっと手前っていう位置関係で。そこは、川沿いにポツポツ集落があって、真ん中に役場があるような、小さな村なんです。
鄭:
山の中っていう感じですか?
西田:
そう。両側がそそり立ってて、道路もクネクネしてて、開けると富士山が見える様な場所です。自分も中3の時に塾生として合宿に行って、キャンプファイヤーやったり、田んぼの中を女の子と手つないで肝試ししたり(笑)。引率する立場になって行ってみて、あらためていいなと思ったんです。僕は生まれが東京なんで、いわゆる田舎がないんです。行くと落ち着く場所とかもなかったんですけど、たまに道志村に行くとホッとするんです。車で行って、川沿いでボーっとして、川に足つけて帰ってくるだけなんですけどね(笑)。
鄭:
そんなに近いんですか?
西田:
車だと3時間くらいですね。道が細いからすれ違うだけでも怖いんですけど。初めて行った20年くらい前に比べれば、整備されています。
それで修士設計の時に、ここを舞台にして何かできないかなと考えたんです。細長い村で、まとまってどうこうっていうのは出来ないから、7カ所くらい選んで、滞在型の施設や、そこで作ったり穫れたりしたモノを売るスペースといった、ベースキャンプのようなものを設けたんです。そこでは、絶えず動き移りゆくなかで、自らの位置を確認していく、いわばいくつもの根拠地を探していく、そんな活動のもととなる場所を作っていきました。

修士設計
鄭:
集落とかの勉強をしてたわけじゃないですよね?
西田:
「住居集合論」など読んでましたけど、特にしてないです。建築を作るっていうよりは、モノの配置とか、場所を作ることに魅力を感じてたんです。建築を作るっていうことは、オブジェを作るわけではなくて、場所を作ることなのかなと思って。それがその頃はストレートに配置に現れてきたんだと思います。
鄭:
なるほど。
西田:
最近、あんまりプランにこだわってもしょうがない、っていう風潮になってきてるとは思うんです。プランとかモノの配置とか配列って、強制する力が強いっていうか、型にはめようとしてるっていう意味で、マイナスなイメージがあるからだと思うんですけど。そうは言っても自分としてはプランにこだわらざるを得ないというか、どうしても意識してしまうというか。それは強制させたいがためにこだわるんじゃないんですけどね。
鄭:
プランじゃないっていう表現自体に意味があるように思えないですけどね。
西田:
そうなんだよね。プランって言うとモノをスパって切った時の断面な訳で、断面図はセクションて名前がついてますけど、それだって垂直方向のプランなわけです。だから、いずれにしてもプランで表現するしかないんじゃなかろうかと思うんですけどね。
鄭:
どんな人でもそうだけど、「あなたの部屋を書いて下さい」って言ったら、必ずプランを書きますよね。それって人間が空間を意識する時に、必ずプランとして落としこんで意識してるからだと思うんです。
西田:
そうですね。いきなり展開図書いたりしないですもんね。
鄭:
そう考えると、建築ってプランと切り離せないっていうか、プランじゃないところから入る考え方もあるとは思うけど、どっかでプランにしなきゃモノにならないですよね。
西田:
ならないですよね。いきなり雲をつかむみたいにこんな感じって出来ればいいんですけどね。だから並べ方だとか、どうあったらいいのかなとか、建築に限らずモノの置き方は気になりますね。
西田さんの図面はすごいんです!●
鄭:
図面の話で思い出したんですけど、壁とかが全部カット図になった、施工手順みたいな詳細が書かれている図面を見せてもらいましたよね?
西田:
あれはまず自分が分かんないから書いていたもので、それを作ってもらう大工さんにどうやったら分かってもらえるかなって考えると、やっぱりアイソメとかアクソメとかで書いた方が、速かったんですよね。入り組んでるものがあると、その裏がどうなってるかを考えて、図にした上で、「これで収まりますか?」「これじゃ収まらない」といった感じで話が進んでいくと思うんです。そのやり方は今も変わってなくて、現場に入ってからどう収まるのかなっていうことを、現場の人と考えたり、考える素材をまず提供する。気になるところを小出しにして、「考えようよ」ってやらないと、どうしてもなんじゃこりゃって感じになっちゃいますから。
鄭:
大学で教育を受けると、図面は平面、立面、断面、矩計図…それから詳細図、展開図っていう風に、決まりきっている感覚があったんですけど、西田さんの図面を見せてもらった時に、結構衝撃だったんですよね。
西田:
「どれに当てはまるんだ?」みたいな。
鄭:
学校では、こうやって書けば現場で建つんだっていう感覚で書いてるじゃないですか。でも実際には建たない。その間をつなぐ絵っていうものを初めて見たんです。その時に、図面は決まりがあって書くものじゃなくて、意思を伝える為にあるんだ、っていうことに気付いたんですよ。建築を建てる為の言語としてとらえることができたんです。それからはディテール考える時もアクソメを書いて考えるようになったり、西田さんの図面に影響を受けましたね。
西田:
カット図は一般的な収まりとはちょっと違うことをやろうとする時に、どうしたらいいの?っていうのを大工さんや板金屋さんと話す為のものですね。
西田さんの気になること●
西田:
卒論をやり始める時に、いろんな分野の本を読み始めるようになりました。それまではあんまり意識が外に向いていかなかったけど、年を追うごとにいろんなことに興味が出てきたんです。
特に2001年の米国同時多発テロ事件以降、作家の池澤夏樹さんがそれに関してメールマガジンで意見を表明してたんです(カフェ・インパラ www.impala.jp 参照)僕はそれが本「新世紀へようこそ」になった状態で知りました。そういうのを読み出したら、建築というよりは、世の中のことにすごく興味が湧いたんです。そうすると日本で起きてることも気になってきたり。
鄭:
そういう風にもっと広い社会の話に目を向けないと、なかなか建築ってできないですよね。
西田:
よっぽどのアーティストなら別だけど、普通の人がやるんだから、日々感じてることが出ちゃいますよね。
鄭:
お施主さんにしても、自分とは全然違う世界で生きてたりしますからね。建築のことばっかり考えてたら、全く相手のことを理解できなくなってきます。
西田:
共通の話題を持てるように、なるべくベースを広げておいた方がいいなと思います。
鄭:
そうですね。
西田:
そうやっていろいろ考えるようになって、ふとした時に、「ライフサイズ」ってあるのかなって考え始めたんです。ライフスタイルとかライフサイクルっていう言葉はありますよね。「寿命」っていう意味ではなく、よく「身の丈」にあった生き方って言いますけど、それを言葉にしたらライフサイズで、結構いい言葉かなと思ったりして。それを意識しながら建築を作っていけたらなっておぼろげに思い出したんです。
鄭:
実際の設計の中でもお施主さんのライフサイズを意識されますか?
西田:
面と向かって言ったことはないんですけど、意識はしてます。
たまたま2件続けて2世帯住宅を設計したんですけど、ご主人の親御さんとの場合と、奥さんの親御さんとの場合とで、親子関係が微妙に違うなと思ったんですよ。
片方は住宅の中で、いろんな意味でつながってるんです。玄関は共用で、1階が親御さんの世帯で、2階から上が息子さんの世帯です。吹抜けを通して1階と2階がやりとりをできるような場所になっています。音もお互い響き合う。だから本当に一緒に住んでる感じになるんです。こういう作り方もこの家族には合っていたように思います。
もう一方は、玄関も含めて全部2つずつあり、つながっているところはほんのわずかですが、お互いの気配は残しつつ、それぞれの生活リズムを尊重したつくりになっています。
同じ2世帯住宅でも、家族によって全然違う。空間の作り方がそれぞれ全然違うんだなって思いましたね。



photo:鈴木知之
鄭:
お客さんそれぞれのライフサイズに合わせるということですね。
西田:
この前やった木造の住宅では、お施主さんがいろいろなものに興味のある人で、薪ストーブとOMソーラーをどうしても入れたいということだったんです。OMソーラーを使うのは私も初めてで、工務店のオープンハウスに一緒に行ったりしました。そういうお施主さんの興味のあるところから始まることもあります。
OMならOMなりの建築のあり方っていうのがあって、それをお施主さんに合わせて作るわけです。わりと上から下までオープンな家の作りになりましたね。
鄭:
OMソーラーってどういうものなんですか?
西田:
屋根で暖まった空気を、1階の床下に落として、窓際の吹き出し口から部屋の中に取り込むようになってます。そのため基本的にオープンな作りになるんですね。
さっき川の話が出ましたけど、川って基本的に高いところから低いところに流れますよね。でも、場所によってはよどみがあったりします。それは空気も同じで、建物を作る時に、居心地のいい空間の為に、空気の流れをよくしたいと思うんです。気持ちの面でもどこかが抜けてく様な。そういうのはOMソーラーの場合に限らず意識してますね。
鄭:
お施主さんのライフサイズや興味に真正面から取り組んでいますね。
西田:
最近は、コンステレーション、つまり星座をめぐるものの配置について考えることがあります。星座っていうのは、地球の方から見た星の集まりを、コグマとか、サソリとか、オリオンとかって命名してレイアウトを決めてるわけですよね。地球じゃないところから見たら、また違った見え方な訳です。
そういったように、立つ位置が変われば、モノの見え方も変わるっていうことです。必ずしも、真っ直ぐ見えているものが全て正しいっていう作り方はしたくなくて、いろんな解釈の幅があるような作り方が出来ればなと思って。
鄭:
モノの作り方とか、人の関わり方についても?
西田:
そうですね。必ずしもストレートに建築に関わってるとも限らないんだけど、そういうのを気にしてます。神の視点のように、高い所から見下ろすようなことはしないですけどね。
中学生の時に作った文鎮が、まだ手元にあることに驚きでした。文鎮も事務所名も、シンプルですが、その裏には深い思いがありました。事務所がかっこよくて、憧れます。
聞き手:鄭、竹下(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

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