生活普段議 
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第18号   永山 祐子さん  「モノ(=アイディア)はいつでも探してます」
今回は永山祐子さんを訪ねました。
部屋に入るなりテーブルの上には所狭しといろいろなモノが並べられていました。石あり猫ありカンパリあり、と、面白いモノを見つけるのが特技の永山さんです。
 
永山 祐子(ながやま ゆうこ)

1975年 東京都生まれ
1998年 昭和女子大学生活美学科卒業。青木 淳建築計画事務所に勤務
2002年 永山祐子建築設計設立

永山祐子建築設計のURL http://www1.odn.ne.jp/yukon/index.html/
カンパリの8本セット●
鄭:
いろんなモノを用意していただいていますね。
永山:
「キレイだな」とかいう基準で、気に入ると買ってしまうんですよね。
小林:
これは?
永山:
カンパリソーダです。インゴ・マウラーが照明に使っている、その瓶です。ヨーロッパを旅行した時に、このセットをみつけて、キレイだなって思ったんです。このキレイな瓶を照明にしてしまうあのセンスもすごいと思います。


小林:
あの照明(カンパリライト)は、この瓶なのか…。
永山:
これが寄せ集まってできてますね。まだ未開封です。
鄭:
入っている量がマチマチなのは…。
永山:
そうなんですよね。もともとマチマチで、どうしてなんだろうって…。
小林:
イタリアだからでしょうか。
永山:
どうでしょうね。
鄭:
でも、それがデザインのアクセントになってますね。
小林:
ヨーロッパを旅行されたんですか。
永山:
そうです。これはミュンヘンの空港の免税店で買いましたね。
小林:
あちこち回りましたか。
永山:
スイス、イギリス、ドイツです。10日間くらいで。
鄭:
ちょっとシブい国ですね…。
永山:
知り合いがいたりしたので、そういう国へ。建築関係者だとフランスは必ず行くみたいですけど、私は全然。
小林:
むこうでは、日用品でも「おっ」と目に付くものがありますよね。
永山:
そう、あるんです。これも、そのひとつです。 光に透けると、本当にキレイです。ここまで赤い液体はなかなかないと思います。 私は、お酒は全く飲めないので、観賞用です。
小林:
日本では手に入るんですか。
永山:
たぶん売っていると思いますよ。
ジューシーな果物が真っ黒に●
小林:
あと、これが気になっているんですけど…。



アニッシュ・カプーアの
作品写真と果物の炭
永山:
これ、ぜんぶ炭なんです。
小林:
炭ですか?
永山:
ドリアン、松ぼっくり、マンゴスチン、蓮、…。全部タイで買いました。
小林:
すごい。どうやって炭にしたんですかね。
永山:
たぶん、ゆっくり焼いたと思います。形が崩れないようにして。 これを面白いと思ったのは、アニッシュ・カプーアの作品に似ているなって…。だから、見た瞬間に「買わなきゃ」って。こわれないように気を付けて持ち帰ってきました。
鄭:
これは、なにか用途があるんですかね。
永山:
消臭剤とかですかね。以前、炭が流行ったときがありましたよね。 これは、やってみたらできたっていう感じなんでしょうか。でも、まだちょっと臭いのもあります。
小林:
え?
永山:
これ、ドリアンはまだニオイがします。嗅ぐと…、ドリアンくさい。これじゃ消臭にならない。たぶん、焼きが甘かったんでしょう。松ぼっくりなんかは、完全にニオイはしません。
小林:
本当だ。これだと表面積が大きいし、消臭にはいいかもしれませんね。
永山:
その形のまんま炭になる、というのが凄いです。
鄭:
葉っぱもそのまま炭になっている。
小林:
燃え尽きないんだ…。
永山:
たぶん、本当にゆっくりゆっくり焼くんでしょう。 これは、炭化しているので、つまりひとつの成分でできているんですよね。それが面白いと思います。
小林:
皮も実も…。
永山:
一つのものが寄せ集まってできているのとか、すごい好き。
小林:
もし、力一杯たたくと…。
永山:
粉々になっちゃうでしょう。実際、弱いところを持つとパリッと割れます。だからカゴ付きで売っています。
鄭:
割ったら、中が生だったりしないかな。
永山:
このドリアンは怪しい(笑)。 備長炭とか、木を炭にするのは普通にありますけど、果物みたいなジューシーなものを炭にしようという発想が面白いです。 松ぼっくりくらいは、ひょっとしたら今までにもあったかも。
小林:
しかも、しっかり形をとどめている…。 こういうのを見ると、自分でも焼いてみたくなりますね。人気出そうですけど。
永山:
私、輸入しようかなって考えたことも(笑)。
小林:
むこうでは、1ついくらでしたか。
永山:
500円くらいだったかな…。 静物画の果物が、あれが全部炭でできてたら、面白いなと…。
鄭:
後ろに絵を掛けて、前に同じ状態で炭を置いて(笑)。
ブタもいます●
小林:
そちらは?
永山:
これも、「ひとつのものでできている」という点では同じです。ビニルテープでできている豚です。アフリカのデザイナーの作品らしいです。
小林:
これは、どこで買ったのですか。
永山:
これは日本です。なんか、店先に沢山並んでいて瞬間的にグッときました。
小林:
永山さんは、面白いモノを見つけるのが得意なんですか。
永山:
そうですね。瞬間的に、見つけたと思ったら、即買う、みたいな。 これも、店の中に入らずに外から見てて、パッと目に入ったのでパッと買いました。
小林:
それは大切な感覚ですね。持ってみてもいいですか。
永山:
どうぞ。針金とビニルだけでできています。
鄭:
一瞬、掃除用具かと間違えそう…。
永山:
そうですか(笑)。しっかりボリュームはできているけど、ビニルをかき分けてみると奥の方が暗い。そういう感じは、好きです。 割と、ものを買うときは、アイディアをもらうという感覚で集めるので、だから事務所に置いておいて、こう、何かつくろうかなっていうときに眺めたりします。
小林:
普段から刺激というか、アイディアを求めながら過ごしていますか。
永山:
そうですね。それは自覚しています。 いろんなモノがなんとなくストックしてあって…。だから、案出しは早いほうだと思います。 私は、すごくモノが好きで、それでヒントをその中に探すのが好きです。 ある雑誌社の方も、来たときに「おもちゃが一杯で楽しいね。新しいのが集まったら、また呼んでね」って感じで。
その名も「テレビ石」●
永山:
あと、石も好きで、これ「テレビ石」っていうんですよ。物に載せると、像が映るんです。

テレビ石。像が映る様子が
わかりにくくて残念です…。
むこうは方解石。
小林:
名前は知っていましたが、さわるのは初めてですね。
永山:
これは、つまり天然の光ファイバーです。本当に真後ろに映像がないとキレイに映らないんですけど。ちょっと浮かせるとボヤーってボケちゃいます。
鄭:
いろいろ映してみると面白い…。
永山:
そうです。渡すとみんないろんなところに当ててますね。 京都の石屋さんで買いました。置いてあるのは、たいていパワーストーンなんですけど、たまに変わった石も。こういうテレビ石とか、変な形に結晶化している石とか。見てると、本当に面白いです。 テレビ石は、本当はナントカマイトっていうんですけど…。
小林:
「テレビ石」って言われた方が、キャッチーですね。
永山:
カワイイですよね、「テレビ」なんて。映っちゃうからテレビって呼んじゃうのが、面白いです。
小林:
石のパワーとかいうのには興味ないんですか。
永山:
ほとんどないですね。それよりも、エフェクトの方に興味が。光と影とか、一時期かなり凝っていました。 奇石(きせき)美術館っていうのがあるらしくて、一度行ってみたいです。コンニャク石とか、曲がるんですけどね、テレビ石のすごくぶ厚いのとか、見てみたいです。 あるお店で、テレビ石が大きな写真の上にいっぱい置いてあって、絵がボコボコボコって盛り上がってて、すごく面白かった…。
変わりダネのサイコロたち●
小林:
本当にいろんなものがありますね。 こっちのは、石ではなくて…、


永山:
サイコロです。
小林:
いっぱいありますね。これなんか…、何面ですか。
鄭:
30面…、かな。
永山:
そうですね。いろいろあって、面白いです。こういう形は思いつかなかったー、っていうのも。 あと、どこの数字を読むかっていうのも重要です。これは底面を読むんで、底面には同じ数字が並んでますね。こっちのは頂点の数字を読みます。
鄭:
(転がしてみて)あんまり回らないのもあるな…。
小林:
こういうの、どこで買ってくるんですか。
永山:
近く、駅前のプラモ屋とかで。模型材料を買いに行ったときに見つけて、食いついて!1つ100円くらいで売ってます。こう見ていて、法則を見つけるのが面白いんですよ。それぞれを見ていくと面白くて、モノとして魅力的です。
鄭:
ああ、必ずしも反対側の数を足して同じになるわけじゃないんだ…。
永山:
そうです。いろんな発見があります。形もそうですが、表面の触感とかも。
小林:
これは実際何かに使ってますか。
永山:
いやー、使ってませんね。
小林:
さらに、これは数字ではなく…。
永山:
トランプのK(キング)とかJ(ジャック)とかですね。何に使うものなのかわかりませんけど(笑)。
妙にリアルな猫が一匹●
永山:
アーティストの方の作品で、段ボールでできている猫です。湿らせた紙に石膏を混ぜてぐるぐる、って。確か…、本濃研太さんというア−ティストの作品で丸ビルのアワードか何かでこの猫がいっぱい並んでいました。ほしいって思ったけど、作品だしなー、って思ってその場ではあきらめて。そしたら、HPデコでその方が個展をやっていて、その猫を売っていたんです。このグレた猫っぽいのがいいんですよ。で、2匹買って、1匹がここにいるわけです。
小林:
体のラインが生き生きしている。
永山:
そうなんです。いっぱいいた猫は、ぜんぶ違うポーズをしていました。歩き出している、とか、年を取って寝ている、とか。ちょっとした紙のひねり方で表情を出してて、これはすごいって思いました。
小林:
一体一体、手づくりなんですね。
永山:
そうです、手づくりです。不思議な存在感があります。
小林:
プロポーションが、またいい。いかにも、その辺にいそうな猫の感じが出てますね。
永山:
やっぱり立体って面白いです。不思議なリアル感で、段ボールとは思えないですよね。なんか、猫の存在感を表しています。
小林:
猫好きですか。
永山:
大好きです。
小林:
さっきの豚は完全にデフォルメ、この猫はリアル、その対比も面白いです。
永山:
こういうの、本当に巡り合わせで、たまたま打ち合わせで行った街で見かけて「あっ」て。
小林:
変わったモノを集めてしまうあたり、トラフのお二人に相通じるものがあるような…。 (永山さんとトラフはお知り合い)
鄭:
ここも、トラフも、小物がいっぱい…。
永山:
モノ好きですね。
燭台。でも毛深いんです●
永山:
それから、これは燭台です。燭台って好きなんですよ。変な形が多いんですけど…。




小林:
ちょっとスタルクっぽい感じも…。
永山:
ええ。片持ちの形がかわいくて。 それから、これは毛(モケット)が生えてて、そういうのは珍しくて。今は、何にでもこういうふうに毛を生やしてしまう技術があるんです。表情が、まったく光を反射しないマット感が、すごいと思います。
小林:
しかも、輪郭が毛でぼけていますね。
永山:
そうなんです。これは燭台ですけど、家具とかにこれを採用したら面白いでしょうね。
小林:
この毛は、なんにでもつけられるのですか。
永山:
たぶん、そのはずです。話しに聞く所、モケットは何にでもできるって…。 この燭台を見つけたときも「うわー、すごい」って思って。
鄭:
古いいろんなものを見つけてきて、全部こうしてしまったらどうですかね。
永山:
面白いかも。古いものとか、自然のもの、石とかも。
小林:
古いものも、また生き返る。携帯とかは?
永山:
いいかも。でも耳に毛が刺さりそう。「かゆっ」て(笑)。
設計活動について●
小林:
青木事務所には、何年いらしたんですか。
永山:
4年です。担当したのは主に住宅でした。
小林:
それから、すぐに独立されたんですね。
永山:
はい。パラボラを使った美容室(afloat-f)の仕事が最初でした。美容室は、私くらいの女の子が行く所だし、どうかって青木事務所から振ってもらった仕事です。 元々は、そんなにすぐ独立しようとは思っていなかったんです。一度、長く旅行してみたかったですし。大学を出て、すぐに就職して、その間にも旅行に行くこともなく休みなく働いていたので「ちょっと休みたいな」って思っていました。そのときにその仕事が来まして、それで独立したんです。
(右:美容室「afloat」、photo 阿野 太一)
小林:
じゃあ、「ちょっと休み」は叶わなかったんですね。
永山:
そう、叶わなかったんです。青木事務所を辞めて2〜3週間したら、青木さんから連絡があって…。まあ、その縁で次の仕事も、FIELDSのパチンコショールームとかタレントスクールとか、いただきましたし。
で、今は4年目ですね。
小林:
ここに移ったのはいつですか。
永山:
実は毎年引っ越しをしていて、ここで3箇所目なんです。荻窪周辺を転々として、去年ここに来ました。私は、引っ越したいと思ったら一週間以内に引っ越すタイプです。みつけてすぐ、って感じなので即入居可じゃないと。 ここはわりと広いので、しばらくは引っ越さないでもいいかなって思います。やっと模型も自由に作れるようになりましたし(笑)。
現在のプロジェクトについてお聞きしました●
永山:
これは、いまやっている住宅です。模型が30分の1なので、大きいんですけど。
小林:
形がすごいですね。
永山:
この場所は暗くて、隣もマンションがあって、だからいかに光を入れるかということが問題でした。それで、すり鉢状にすることで、まず光が入って、あとこの屋根に反射させて光をこの中に入れるという感じです。そうすると、屋根の一番下が目線くらいなので、そこから空に向かってスパーンと見えるように…。すごく魅力的なふうに。
小林:
構造はRC(鉄筋コンクリート)ですか。
永山:
RCです。 なんか、凄く明るい丘を見ながら暮らす、というような感じです。
小林:
ああ、この屋根が丘なんですね。
永山:
接道側しか開いていない土地なので、外に対しては全部閉じて、上からしか光を採らないっていう方法です。
小林:
それにしても、大きな模型をつくりますね。
永山:
中に入った感じとか、わかりますからね。それに、模型で結構スタディします。
小林:
この上に立っているのは…?
永山:
これは…、丘、みたいな、アイコンとして頂上に。
鄭:
木の形をした…。
永山:
なにか、です。
小林:
風景として、パーッと丘があって、頂上に一本だけ木があるような感じでしょうか。
永山:
ちょっと緊張感があるみたいにしたくて。
1階からは見えず、2階からちょっと見え、3階から上は見える。
小林:
この「木」は実現するといいですね。
永山:
ちょっと教会みたいな感じもしますけど。
小林:
しますね。 これだけ大きな模型だと、施主も喜ぶんじゃないですか。
永山:
そうですね。イメージしやすいですから、いろんなところから眺めてます。 私自身のイメージも、大きい模型の方がわきやすいので。素材も家具も、なるべくその通りにつくります。
「使われ方」というソフトと「建築」というハード●
小林:
このタレントスクールは竹下通りですね?前を通ったような記憶があります。この蛍光灯が印象的ですね。
永山:
そうですね。それはオリジナルでつくったんです。スリムのサークル蛍光灯を使ってます。片側は配線とかがしてあって、もう片方をワイヤーで吊ってあります。で、もう一方の蛍光灯と繋がっていて、シーソーみたいになっています。ちょっとパタパタっと、フワフワ浮いているような感じになればいいなと。実際も、本当に輪っかだけが浮いている感じです。
小林:
こういうの、若者には好評なんじゃないですか。
永山:
照明がカワイイって言ってくれるみたいです。
小林:
原宿だと、こういうインパクトがないと埋没していきそうですね。
永山:
そうですね。なんか、外国人が写真を撮っていたりするらしいです。「何だ、これ」って感じで。
小林:
道からは、ちょうど天井を見上げるかたちになるので、照明が目立ちますね。 こういう発想の「元」は、なんですか?
永山:
ここでやりたかったのは「奥行きの操作」なんです。
奥の部屋を均質な奥行きの分からない空間にしたくて、ほらエッジがどこにも見えないでしょう、コーナーに全部Rをつけているんです。そこを照明で均質に照らす事でコーナーの見えない、つまり奥行きの分からない空間になります。方法はいくつか考えましたけど、蛍光灯のようなマットな感じの光でムラなく照らすようにしようと思いました。そしたら、それをデザインしていっぱい吊せば均質な光が得られるんじゃないかって思ったんです。
つまり、必要だったので、これができているのです。
小林:
直線の蛍光灯だと、ラインで照らしてしまいますからね。
永山:
そうです。点光源的なものをムラなく置くのは有効でした。で、前にafloat-fでパラボラの照明をつくってくれたスーパーロボットの岡安さんに相談して、つくりました。
こういう場所だと、人の意識を奥に向けさせるのが難しくて、ですから奥が凄く明るいとか奥行きがわからないとか、そういう魅力をつくるんですね。
小林:
機能はタレントスクールですよね。
永山:
タレントになりたいコたちが来て、なんか日常と違う雰囲気を感じ取って、期待感を持ちながらここに来るといいなと思いました。
小林:
そのまま撮影スタジオとして使えそうですね。
写真だと蛍光灯が目立ちますが、実際に現地に行っても同じですか。
永山:
はい。スリム管なので、輝度も高いですから。
小林:
まったくの新設スクールなんですか。
永山:
そうです。実は、とにかく時間がないプロジェクトでした。基本設計3日、みたいな!だから、「最初から一緒にやらないと間に合わないんで、使う業者を指定させてもらいたい」って話をして、了承してもらって、それで進めました。だって、「TVCM打ってるから」とか言われて、見てみたら本当に流れているんですよ。「近々オープン!」って。「ちょっとー!」って感じでした(笑)。
小林:
(笑)それは大変でしたね。
タレントスクールだと、若い子にウケないと人が集まらないでしょうから、こういう風だと宣伝効果があっていいですね。
永山:
そうですね。具体的なレスポンスは、私の耳にはあまり入ってきませんけど(笑)。
はじめは、先方が建築に妙に期待している感じがあって、でももちろんソフトあってのハードなので、話し合いはしていました。建築ですべて解決しようなんて無理ですからね。
鄭:
企業によって、その「使われ方」というか企画に対しての認識は違いますか。
永山:
違いますね。これはこう使いたい、こういうことをしたい、ってはっきりしていれば、答える側としては狙い打ちしやすいです。先方にもちゃんと建築家がいる場合もあります。京都でやったルイ・ヴィトンなんかがそうなんですけど。建築をわかった上で翻訳してこっちに回ってくるんです。ただイメージをボンって投げられるんじゃなくて、こっちが回答を落とし込めるような形で要望が出てきます。ただ、むこうも専門家なので、逆にシビアな面もあります(笑)。
建物にどういうことを求めて、求めることは建物で得られることなのかどうかをわかっていました。単にイメージだけの人は結局自分がどういうものを頼んでいるかがわからないので、できてもどうしていいかわからないことが正直あると思います。そういう感じの人は最近増えていると思います。「オシャレ建築」が付加価値を生む時代になって、みんながそれをやればある程度うまくいくんじゃないかっていう幻想を持っています。自分の中で煮詰めないまま、いきなり建築家がどうにかしてくれる、って、すべてお任せ、って。まあ、時間があればそれでうまくいく例もありますけどね。そういうのも面白いとは思いますけど。
(右上:ルイヴィトン京都、photo 阿野 太一)
小林:
表参道のブランドの建物とかで建築家とのコラボが流行って、その表層だけをさらって「じゃ、うちも」というような流れはあるような気がしますね。背後にある思想は抜きにして、表面のオシャレさだけをもっていくような…。
永山:
本当にイメージだけで。
あと、住宅にしても、雑誌とかでちょっと知識を得ていると、施主さんも「こういうので」とか言われます。それはむしろデザインの巾を狭めるんですよね。家具とかは特にですけど、みんなが知識を得ています。「イームズじゃなきゃ、いや」とか言うんですけど、いや、ここにはちょっと合わないんじゃないかなって思うことも。
鄭:
知識が多いのはいいことなんですけど、余計なことも知りすぎですね。
永山:
そうですね。
あと欠陥がどうとか…。TVでみて心配になったみたいで、「こんなんじゃないですよね」とか言われます。
デザインに興味を持ってくれる反面、そういう弊害もあるのは確かです。
鄭:
特に住宅はそういう傾向に…。
永山:
ありますね。
鄭:
一つのステップとしては必要なんでしょうけど。そういうところを経ないと深いところに入ってもらえないでしょうから。
永山:
興味を持ってくれるだけいいのかもしれませんけどね。
施主とのコミュニケーションをしっかりと●
鄭:
今までの仕事では、さっきのお話以外でも、建築家に対する「期待感」はすごくありましたか。
永山:
ありましたね。商業建築が多かったので、やっぱり建築家に頼むのは、そういうところです。付加価値をつけてくれるんだ、という期待感ですね。露骨に「売れる店にして」って言う人もいました。「売れる店」って言われても…、って感じですよね。
つまり、そこでどういう効果を生むか、店に魅力があって、その魅力で人を呼ぶ、ということでしか答えられないです。
鄭:
飲食店で、いくら素晴らしい空間をつくっても、食事が美味しくなかったらどしようもないし。
永山:
結局中身なんですけど、以外とそこがスッパリ抜けていたりするので…。
鄭:
空間は最初の導入にしか使えないと思います。食べ物屋さんなら、やっぱり味が重要です。建築がもう一つの作用としてそこにあるならわかりますけど、建築自体が売れる場所として定義づけられているのが妙な気がします。
永山:
妙な期待感をもたれ過ぎているので、危険ですね。最近思うのは、その間をつなぐ人がいるといいなって。そうなると、たいていはアートディレクターと呼ばれる人が入ってきますね。そういう人がいるとうまくいく場合が多いですね。でも、中には建築の知識があまりない人もいて、結構無茶なことを言う場合も…。
小林:
そうなると、建築家は一匹狼ですね。狭間にいる。
永山:
ちょっと振り回されたりして。
もうちょっと建築の上辺だけでなく中身も知ってほしいなって思います。
鄭:
プロジェクト上、たとえば店がどう回ってとかいうことまでを建築家に伝えなきゃいけないって思っていないんじゃないですかね。
永山:
たとえば、美容室(afloat-f)の場合は、その人自身二軒目だったので、お客はこのくらいでセット数はこれくらい、スタッフはこれくらい、とか、前の店での改善点も含め、割と明確だったんです。
そういう風にはっきりしているとわかりやすいですね。
鄭:
すると、設計するときはイメージでなく、ここで何が行われるというアクティビティを想定しないと形にならないでしょう。
永山:
ええ。住宅だってそうです。青木事務所時代は、住宅をやっていました。設計の最初に、持っているものを全部見せてもらうようにしていました。量とか…。
鄭:
「ここはみせたくないんです…」「いやー、ここが見たいんです…」って?(笑)
永山:
そうですね(笑)。そこをカウンセリングしないとダメなんですよね。モノの量もですけど、片づけられる人かどうか、とかも。性格的な部分も見るようにします。
小林:
暮らし方、ですね。
永山:
そうです。
新しく建てると、最初は皆さん「片づけますー」って言うんですけど、暮らし始めるとそうでもなかったりします(笑)。
小林:
最初にコミュニケーションをしっかりとって進めるんですね。
永山:
そうです。それは絶対条件です。自分の中の「イメージ」とかとは別の次元の問題です。
過去に、そこが不十分で後ですごく手直しをしなければならなかったこともありました。ですから、施主とのコミュニケーションは土地の形とか法規とかと同じくらい重要なことで、今もこれからもずっとそうだと思います。それがない設計は、正直やるべきじゃないでしょうね。だって、結局、最終的に幸せにならないですからね(笑)。
若手建築家を扱う生活普段議、永山さんは今までで一番の若手でした。フワッとした印象に反して、モノを見る独特の鋭い視点、そのギャップが驚きというか楽しいというか…。
聞き手:鄭、小林(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

クレジットのない写真はすべてキャベッジ・ネット撮影
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