生活普段議 
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第17号   木内 厚子さん  「建築と、それを取り巻くものづくりがしたい」
今回は、スタジオ8(エイト)の木内厚子さんの事務所にお邪魔しました。
おもちゃから手づくりのプロダクト(?)、某TV番組の裏話まで、いろいろなお話が次から次へと出てきました。
 
木内 厚子(きうち あつこ)

1971年 長野県佐久市生まれ
         東京芸術大学美術学部建築学科修士課程修了
1997年〜佐藤光彦建築設計事務所、飯田善彦建築工房を経て
2003年 Studio8設立

studio 8のURL http://www.geocities.jp/studio8j/
テンセグリトイ!?●
(テンセグリティというのは、彫刻家ケネス・スネルソンとバックミンスター・フラーによって提唱された構造概念で、テンション(張力)とイテグリティ(統合性)を合わせた造語。引張力と圧縮力を受持つワイヤーと線材から構成される構造形式)
木内:
これ、テンセグリティのおもちゃで、テンセグリティが自分でつくれるんですよ。普段は、こんな風につくって置いてないんだけど。



テンセグリトイ
小林:
わざわざつくっていただいたんですね。
木内:
そうなんですよ。ただこの木の棒の端のキャップを外して、ゴム紐を引っ掛ければ、子供でもできるっていう。一番大きいのはこの箱に載っているもので…。
小林:
三角形からできちゃう?
木内:
そうそう、これをこう。形によって入れる場所があって、こうやって組んでいくんです。
鄭:
…ん、よく考えないと形にならないですね。
木内:
そうですね。最終的な完結した形にするのは、子供だと教えないとできないかな。いくつかのパターンを組み合わせてたり。
鄭:
…子供といわず、僕も無理かも。
木内:
最初は三角形で、これは近いところで五角形に組むとか。四角形に組むとか、考え方は割と分かりやすいのかも知れないけど。これも、最初四角形をつくって、それでまた四角形をつないでいく。そうすると、これになるんです。
小林:
ここがその四角形なんですね。
木内:
けっこうゴム紐部分はテンションかかってますよね。あと、できあがったものが弾力があって、強いっていうのもよくわかりますよね。すごい単純なんだけど、面白いですよね。
鄭:
こういうのを与えられていると、はまりそうですね。いつまでもやってそうで、怖いな。これは、どこで手に入れたんですか?
木内:
人からもらったんですけど、アメリカのお土産。結構できるとうれしいんですよ、これ。やってみてください。
鄭:
はい。あ、いいですよ、僕はこれやってますんで、話しててください(笑)。
小林:
お土産でもらって、ずっと置いてあったんですか?
木内:
うん、何回かやって、しばらく…。今日も久々にやって、なんか楽しかった。
小林:
これは、正解は無いですよね。こういうのが、割と無限に遊べる秘訣なのかも知れないですね。
木内:
そうですね。すごいたくさんバリエーションあるけど。レゴとかに近いのかな、遊ぶおもちゃの類としては。
小林:
レゴは造形的な感じですけれど、これは幾何学的な遊びですね。
鄭:
できない…、できそうで、できない。出来ているようで、出来ていないような。
木内:
そう、幾何学的なんで、基本的には同じシステムで組んでいかないと、出来ないんじゃないかな。
鄭:
対称性を保っていないと、いけないんですよね。
小林:
いいものをお持ちですね。
木内:
無理やりもらったんです。その人がアメリカから10セットほど持って帰ってきていたので、「これちょうだい!」って!(笑)
イタリアのNAVA Designの手帳●
木内:
この手帳はすごい気に入っている手帳で、NAVAというイタリアのものです。



ミニ6穴システム手帳
NAVA Design
小林:
変わっていますね、おおすごい!ここはマグネットで閉じるんですね。
木内:
そう結構使いやすいんです。
小林:
ぼくのシステム手帳は、ストラップで留めるようになっていて、あれがイカレちゃうんですよ。これだと、ぱっと閉じるとくっついて…、これいいですね。
木内:
お揃いにしますか?(笑)色も何色かありますよ。
小林:
また、ここのエッジの色がいいですよね。こういう色彩感覚は、なかなか真似できないですよね。
木内:
イタリアらしいデザインですよね。それが気に入りました。
小林:
こういう、リングのあたるところにスリットを入れてデザインにしているところとか。これは、どこで手に入れたんですか?
木内:
これはね、ネットで。私、あんまりものを細かく記録したりとか。スケジュールとかも、適当に書くくらいしかしないんですけど。ちょっと前に、「システム手帳をうまく使いこなす」みたいな本が売れていたの知らないですか?それを読んで、よし、これで変わるぞと思って!まずはものから入ったんですけど。単純な動機です。
小林:
その後効果は?
木内:
あんまり…細かくはつけていないです。でもこの手帳に出会えました。
テンセグリトイは、はまります!!●
鄭:
…ちゃんとやんないと、だめみたいだ…(形がつくれず、まだやっていました)。
木内:
だめでした?これ結構はじめると止められないですよね。
鄭:
すごい、悔しくなってきた。
木内:
いいですよ、これ全部崩して、一番大きいのをつくってもらっても。
鄭:
いいですよって言われても、一番大きいのは…ちょっと。いいです。小さいので。
木内:
いいですか?マニアル見ないで。
鄭:
見ないでやるのが、好きなんです。
木内:
なんか、いいですねー。それが正解ですよね。
鄭:
見ちゃうと、楽しみをいろいろ、
木内:
取られた感じですよね。見ちゃうと、次も見ないと出来ないし。
話をもどして…NAVA Designの手帳●
小林:
この感じは、すべてがしっくりきていますよね。
木内:
大きくなると、ジッパータイプになるんですけど、この大きさ―私はあんまり物自体大きいものは好きじゃないから―このサイズのものが、いいと思う。
小林:
ジッパーだと、書くときに手に当たったりするから、あんまり好きじゃないですね。革自体も良いものなんですか?手触りがすごくいいですが。
木内:
特別いい革ではないと思います。でも、厚いですよね、合わせてるのかな?
小林:
そうですね、シッカリしているけど、硬くない。
木内:
あと、手帳の中(リーフ)のデザインも可愛かったんですよ。オレンジとグレーのツートンでデザインされていて。たぶん、ITO-YAとかに行けば、売っていると思います。
小林:
リーフもNAVAのものなんですね。いいですね。ああ、ホントだ…でも7カ国語。
木内:
そうなんです。でも日本の暦とかが入っていないから、それはまあカレンダーでチェックして。
小林:
そうか…。
木内:
でも、ひととおり後ろにリストが載ってますよ。日本はこの日が、何の日って…そんなの見てられないけど!
小林:
どうりで、マッチしているはずだ。これで中が変なリーフだったら、ちょっと嫌ですよね。打合せ先とかでこれを使ってると、何か言われません?
木内:
んー、意外と言われないですね。地味なのかなーって、思ったり。
小林:
デザインがとっぴではないですからね。ただ、気が付けば「おっ!」と思います。
木内:
結構、凝っていますよね。でも言われないですね。今日も何も言われなかったらどうしようと。(笑)
小林:
いえいえ、でも内心、「気が付いて!」とか思っていません?
木内:
思いますね。嬉しいですよね、言ってもらえると。じゃあ、お揃いにしましょうよ。
小林:
しましょう!
木内:
ほんと!?
小林:
ITO-YAですか?
木内:
ITO-YAにこれが売っているかどうか判らない。ネットでNAVAで検索すれば出てくると思いますよ。ホントにお揃いにします?いいでしょこれ?うれしい、はじめてこんなに反応してくれた人(笑)。
三度、テンセグリトイ!●
鄭:
んーー。(まだ、もがいていました)
木内:
あははは、面白いですね。もって帰りますか?
鄭:
でも、これを事務所とかに置いておいたらヤバイよね。
小林:
それはヤバイね。
木内:
いいですよ、持ち帰っても。
鄭:
いや、仕事しなくなっちゃうので。でも、いいですねこれは。
木内:
私もね、もらったときは、すごいはまってやってました。
建築家の事務所は模型がいっぱいあります。眺めているだけで何時間でも時間がつぶせるくらい●
小林:
模型がたくさんありますが、これは?
木内:
久留和海岸の住宅ですね、こちらは長野の住宅2、これは今やっているやつで、生麦だから、近いんです。
小林:
その軸組みの模型はなんですか?


木内:
これは、久留和海岸の住宅の…構造が少し変わっているんですよ、2×4材を使った在来工法なんです。
小林:
この模型は、木内さんが造られたんですか。
木内:
そうです。これはちょっと特殊だったんで、説明するのにも必要だったし、自分でも確認のために造ってみて。屋根に関してはホントに2×4工法の考え方で決まっているんです。面で効いているんですね。鳥かごみたいですよ。意匠的にも2×4材が出てきているんですよ。
鄭:
ほんとだ、天井は梁が見えているんですね。
木内:
一階は壁面に柱が見えているんですよ。最初意匠的に柱を使いたいというのがあって、それを構造で使えないか、という感じで。この模型も、意外とガッチリしていますよ。実際にもそうで、建てている途中は梁がたわんだりしてたけど、固まるとガッチリしましたね。
建もの探訪●
小林:
そういえば、建もの探訪で久留和海岸の住宅が紹介された時、構造の話とかって出てきましたっけ?

photo:石黒守
木内:
出てこないですね。あの番組って最近は特に、生活スタイルとかが主で、あんまり建築の構造的な部分にはふれないような感じですね。
鄭:
施主さんの話とかが多くなっていますよね。
小林:
だからバリの事ばかり話してたんですね。ロケに立ち会ったりしました?
木内:
行きました。握手してもらいましたよ。(笑)サインと。でも、ロケ隊とかって5〜6人来るから、私は結局邪魔みたいな感じで、行き場所がなくて。
小林:
「ちょっと、どいてくださーい」みたいな感じで?
木内:
そうそう、結構悲しいんですよ。でも、あの番組は、最近はやりで多くなってきた住宅を番組の中ではいい方ですよね。
小林:
建もの探訪の方は、スタッフも建築のことを勉強しているんですか?
木内:
でしょうね。番組のADさんでも、200件くらい見たって言ってるから、多分私たちより目が肥えているのかなと思ったり。対応も悪くないです。
鄭:
渡辺篤史さんはもう住宅評論では、大家と言えますもんね。
木内:
それが、すごいんですよ。全くリハーサルなしで、もちろん多少どんな家なのかっていうのは知っていると思いますけど、来て入ったところからいきなり撮影始めて、ぱっと見た印象で会話した方が、いいことが言えるらしいですよ。ぶっつけ本番であれだけ、会話が出来るのはすごいですね。
鄭:
僕も探訪してみようかな…(笑)。
木内:
あ、いいんじゃないですか、それ!そういう企画も(笑)。
鄭:
そういうことを始めると、体がいくつあっても足りないですね。
施工チーム●
鄭:
ここに「Studio 8施工チーム」って書いてありますけど?
木内:
私が設計事務所で働いていた時に、そこで神奈川の仕事をさせてもらいその時に出会った気に入った職人さんたちを中心に、私が設計したものの施工をまとめさせてもらって、工事をやらせてもらっているんです。現場が近い場合に限るのですが。
鄭:
施工まで受けてやっているということですか。
木内:
そうですね。 設計したものを、施工までまとめるというのは、ものづくりの上で本筋であるとも思いますし。ただ、規模や場所で限界があるとは思いますが。それに、すごく目が行き届くというか、コミュニケーションもすごくうまくいくし。あと、気に入った職人さんにやってもらえるっていうのが、一番安心できる。
小林:
大体ニュアンスも伝わりやすいということですか。
木内:
そうですね、間違いないですね。
小林:
クオリティも間違いない。
鄭:
そういうことが可能になると、あんまり図面を描かなくなりません?現場で、その場に線を引いて、ここはこうやってと…細かいところになるとそういうのが増えてきそうな。そういう風にやりたくなってきますよね。
木内:
もちろん、それもありますね。でも、意外とやらなかったな…、そういう風にやったと思われているのかも知れないけど。
鄭:
自分のテリトリー内で動いてくれるということは、突き詰めようと思えば際限なく動いてくれるということじゃないですか?そうすると、図面っていうのはある程度の範囲までしか描き切れないわけだから、
木内:
現場で、ここをこう折ってとか、ここ削ってとか、うん、それはそうかも。
鄭:
単に設計者として入っているだけでは、なかなかそこまでは行き着けないですよね。
木内:
そうですね、普通だとある程度前もって図面を提示します。
鄭:
図面に描かれていないことは、基本的には出来ないよということになっちゃう。施工まで押えていると、そういうところに踏み込めますね。
木内:
そう、工務店に頼んでというやり方とはぜんぜん違いますね。そういう意味でも、この住宅はかなり、色んなことを試せたというか。思いどおり、かなり出来たと思います。
小林:
設計施工っていうか、設計して造るというのを目指しています?
木内:
目指しているわけではないんですけど、スタンスとしてそういうのが一部分あると、思考の仕方がまた変わるので、いいかなと思います。実際は大変なんですよ。(笑)
鄭:
それは、分かります。
木内:
けど、自分がそういう立場に立つとかまとめるとかっていうことになると、またちょっと考え方が変わるので…。でも、いい施工会社は管理もものすごくよくてしっかりしていますし、クオリティも高いので、そういうところとやることも楽しいく勉強になります。
Studio 8の名前の由来●
木内:
Studio 8という名前も、設計だけでなく施工まで踏み込みたいという気持ちがありました。
鄭:
それは、施工者も含めて8人ぐらい集まれば、ということですか?
木内:
ええ。あとは、8が縁起がいいというのもあるし、横にしたら無限大という意味もあるし、なんとなく語呂もいいし。数字にしたいと思って…でも数字にするといろいろ理由を聞かれるからめんどくさかった。最近、保険屋さんが、中国か韓国では8がすごく縁起がいいと教えてくれたんですよ。車のナンバーとかは8はすごく人気があるんですって。
小林:
日本でも8は末広がりでいい数字ですよね。
木内:
丸くてよさそうですよね(笑)。あんまり悪い印象は聞かないから、いいかなーぐらいで。
小林:
あと、覚えやすいですよね。
木内:
そうですね、簡単ですよね。
鄭:
最初聞いたときは、なにかノスタルジーのようなものを、感じたんですよね。いろんな読み方ができて面白いなと。
建築家の作家性●
小林:
なにか、設計の癖とか傾向みたいなのはあります?
木内:
多分あるんでしょうね。わからない、自分だと。ありますか?教えてもらいたい。(笑)
小林:
真っ白で何もないのがいい、という感じではないですね。
木内:
あ、そうですか?でもね、私は自分は真っ白な空間だいすき。物を創造するのは真っ白の空間じゃないとと最近思う。人にはあんまり強要はしたくないですけど。前住んでいた家が真っ白だったんですよ、ほんとに、床まで。あの家はやっぱりよかったなって。
小林:
木内さんの場合、お施主さんの要望とかをよく聞きますか。
木内:
聞きますね。でも、分からないですよ。お施主さんがそう思っているか。あと、いまは好き嫌いがはっきりしている方が多いんで、これはやらないで欲しいって、はっきり言われるんですよ。これは使わないで欲しいとか。
小林:
逆に、木内さんの側から、それは嫌だというのはありますか?
木内:
それはもちろんあります。それは止めた方がいいですよと。
小林:
傾向か、でも僕らが学生のころから作家性なんかには興味がないっていう人も結構いましたよね。
木内:
へー、そうですか?私の周りにはそうはっきり言う人はいなかったですね。思っている人はいるのかも知れないけど。
鄭:
作家性?
小林:
誰が見ても設計者が分かるというのがいいという人と、そういうのはもう意味がなくて、それを押し付けてもしょうがないという人が。
木内:
作家性を意識してつくることはないですね。ただ幾つかの建築作品をつくる過程で、思考は繋がっていますから傾向はでるとは思います。いろんな意味で質が高いものを造りたいと思うけど、多分、施工に興味があるのも意外とそこから来てるんじゃないかなと、自分では思っているんだけど。あんまり、デザイナーとして何かやりたいというよりは、クオリティの高いものが造りたいと、いつも思ってます。
小林:
クオリティっていいますと?
木内:
ディテールとか、環境もですね。環境はなかなか難しいですけどね。やっぱ、ほんとに居心地がいいものをつくりたい、空間の強さがわかるものを。もちろんカッコイイってことも大事だけど。そんなに、変わったディテールとかはしないけど、納まってないものとかは許せないタイプかな?(笑)
一同:
(笑)
鄭:
…オープンハウスには木内さんを呼びにくいですね。
木内:
人の設計に対しては、ぜんぜん!
小林:
このインタビューも言われたりして。「なんか、文章が納まってないよね」とか。
木内:
そんなこと言わないですよ!
鄭:
「丸のつけ方おかしいんじゃない?」とか(笑)。
長野の住宅2の写真に写っている椅子のひみつ●
鄭:
この写真の椅子は?
木内:
この椅子です。これを持って行って撮ったんです。まだ、お施主さんの椅子が入っていなくて。これはドン・アルビンソンっていう、イームズのところにいたデザイナーで、多分日本では新品は売っていないんじゃないかな。
鄭:
どっかで見たような、という感じですね。カワイイな、色とか。
木内:
私も、椅子の展覧会で見て、気に入ってユーズドで買ったんですけど…よかった。でも、意外とね、みんなからはよくないって言われるの。安っぽいて…。私はここの鋳物の感じとかが、気に入ってます。
鄭:
ここら辺のつくりとかは、すごい好きですよ。
木内:
ああ、よかった。今日はすごい気が合う人たちに会えてうれしい!
鄭:
すわり心地がいいです。背中の感じが、形の割には違和感がなくて。
小林:
座面もちょっと広いかな。
木内:
それもありますね。大きくたっぷりって感じで。でも、ちょっと硬いんですよね、長時間座ると。この椅子は見た時に、事務所用に欲しいなと思って、 こっちのは、もう有名なロン・アラッド作…。 上の階にハンス・ヴェグナーのY Chairがあるんですよ。あれはすごくいいですね。椅子は買って使ってみないと分かんないなーって。
鄭:
一瞬座った感覚だけじゃ、
木内:
ぜんぜんだめですよね。
鄭:
長く使っていると、だんだん気が付くこととかがあって。
木内:
ありますよね。買ってみないと分からないなー。
小林:
昔、家具屋さんでダイニングチェアーを探していて、座った瞬間にこれはいい!これはすごいと思った椅子があったんですけど、買おうかなーと思ったら、高くて。それで、調べたらウェグナーだったんですよ。
木内:
ちょっと前にOZONEで、ウェグナー展やっていたんですけど。あれで、かなりの数のウェグナーチェアに座ってみたんですけど、全ていいんです。なんでしょうね、驚きました、すべてが良くて。もちろん飾る椅子、見て楽しむ椅子があってもいいと思うけど…、ウェグナーの椅子はすごいなーと、感激しました。
小林:
あれは、座ってなんぼの椅子ですよね。Y Chairもあれだけ安くして、あのすわり心地っていうのは。
木内:
そうですね、Y Chairはホントに、きれいはきれいなんだけど、別にすごいカッコいい訳ではないし。でも、あの椅子に一度座ると欲しいと思っちゃうんですよね。日常的に座りたい椅子。
いろいろ手作りものがあって●
小林:
本棚とか、気になっているんですけど…
木内:
これなんかは、コンペに出すためにデザインしたものなんですよ。ブックスタンドっていうか…。
小林:
ああ、この穴のところに挿すのか。マガジンラックのような感じですね。
木内:
そうです、そうです。
小林:
ティッシュ置きにもなる?
木内:
いまは、たまたまティッシュが置いてあるだけで!(笑)自分でも、意外とちゃんと使っていないですね。
小林:
この穴の抜いたものが繋ぎになっている?
木内:
そういうわけではないんですけど、ちょっと影が落ちてきれいかな?こっちも、マガジンラック。テーブルの端にかけておいて、この中に入るようになってます。
鄭:
ちょうどいい高さですね。うちも雑誌が机の上に散らばってて、何とかしたいなと。
木内:
でも、なんにも入っていないでしょ?いつもテーブルに積んじゃうから、結局…。
小林:
でも、ちょっとカワイイな。
木内:
いりますか?いいですよ持って行っても。でも、重いんですよね。
小林:
生活普段議で売りますか?
木内:
売ってほしい!
建築以外のこと●
小林:
こういうのをつくるのは好きなんですか?
木内:
いや、こういうのは今まで機会がなくて、これらはコンペのために考えてつくったって感じですね。



マガジンラック
小林:
プロダクトをやってみようとは?
木内:
やってみたいけど…あんまりセンスないかもしれない。(笑)でもやる機会があれば、椅子とかはやってみたい!椅子って難しいみたいだし、かなり試作しないと。でもまずはあれかな、住宅のソファーとかから。自分の設計した建物に造り付けでやったりとかしてみたいですね。
小林:
家具以外では、何をつくってみたいですか?
木内:
んー、何でも造ってみたい。何でも、やるきっかけがあって物事って考えるのかなーって。何か特別あるわけではないけど。
鄭:
自分はこれがやりたいって理由でその中に完結できる人って、割と稀有な存在ですよね。
木内:
これをつくって欲しい、とか言われてやった方ができるかな…、と思いますね。このマガジンラックを考えた時は、これってマガジンラックのコンペじゃなくて、身の回りのものなんでもいいというコンペで、すごい色んなアプローチしたんですよ。ゴミ箱とか、いろいろ…、絵葉書とか、カードをきれいに飾れるのとか、結局それらは作品にするまではまとめられなくて、マガジンラックだけができあがったんです。
小林:
なにか、新しいことを発見したり、発想することとかは好きですか?
木内:
えー、みんな好きじゃないの?(笑)みんな好きでしょ?気が付いた時嬉しいもんね。なかなか、気が付かないんだけど。
鄭:
いつも探しているっていうのはありますよね。
小林:
ぼくも、誰でも好きなもんだと思っていたんですよ。でも、普通の人は、全然面白いと思っていないらしくて、面白いと思って話しても、「ふーん」で終わっちゃうことも多いんですよ。すごい寂しいですけど。
鄭:
言って、「ふーん」で終わっちゃうと、すごいがっかりするよね。
木内:
「何が面白いの?」みたいなのはね。
鄭:
なに無駄なことをそんな嬉々としてしゃべってるんだ!みたいな顔をされると…、ため息が出る時があります。
小林:
こういう世界に入ってきた時点で、ぐっと狭いところに来たんだなという感じがしますね。
木内:
くだらないことに盛り上がってみたり。
今に至るルーツ●
小林:
学部から芸大でしたっけ?
木内:
違います。日大です。
小林:
日大の建築?
木内:
海洋建築なんです。海洋建築工学科っていうんです。
鄭:
海洋建築?油田とか掘るやつ?なにを習うところなんですか?
木内:
普通に、建築設計をやるところもあります。他には海辺とか川辺で実習をするんです。中には海洋生物学をやっていたり、波動をやっていたり、そういう先生もいるんですけど。でも、基本的にはそういうことを専門にしない限りは、建築です。実習には行きましたけど、船に乗って。海底の砂の調査の仕方とか。
小林:
卒業後は、芸大の修士に。
木内:
大学に入ってから、ほんとに建築面白いなと思って。もし建築をもっとちゃんとやるなら、芸大に行ったらいいんじゃないと人に勧められたんですよ。それでたまたま、アルバイトに行ったところに芸大卒の先輩がいて。それで、じゃあ芸大行こうみたいな感じで。その人たちはすごい出来る人で、私もああなりたいわ!みたいな感じで。
小林:
その気持ちは非常によく分かります。じゃあ、建築の方に進んだのは、著名建築家の作品とかを見てということでは?
木内:
私はそれがないんですよ。丹下健三とかガウディに感動したとか、みんなありますよね。私は、建築に対しては無知だったんですよ。周りでそういうのに関心を持っている人もいなかったし、自分も持ってなかったんで。
鄭:
なるほど。
木内:
もともと大学に行く気も全然なくて。ただ、すごくものをつくるのが好きで、祖母が和裁やっていて母が洋裁やっていて、結構そういう被服系のことをするのが好きだったんですよ。あと、料理とかも好きで、食べてもらって喜ばれる感動とかを、ちょこっとだけかじっていたんです。友達にお菓子とかを作っていって、おいしいねーとか言って食べてもらえる喜びを。それで、大学で建築に進むと、これはなんか面白いなと思って。アルバイト先で面白い人に合ったりとか。実際の建築に連れてってもらったりとか。こんなにドキドキするものがあるのか、みたいな感じじゃないですか?
叩かれて強くなるタイプ●
木内:
いま、良くないかなと思っているのは、あんまり意見を言ったり怒ったりしてくれる人が、いなくなっちゃってることです。友達とかも、あんまりはっきり言ってくれないから。それまでは必ず誰か叩いてくれる人がいたんですけど。なんか、基本的に体育会系なんですよ。叩かれて強くなるタイプ。
鄭:
叩かれて強くなるというのは初めてですね。(笑)
小林:
叩いて強くしてきたという人はいますけど。
木内:
勤めていたころは、所長がそこまで言うかって位、言ってくれたことで、それをクリアしていろいろ学んできたけど、今は自分で気付かなきゃいけない。どこまで気付けているかというのが、ちょっと不安になることもありますけどね。
小林:
共同で仕事をできたりすると…、
木内:
良いんでしょうけどね、なかなか相手がいないです。仕事となるとなかなかいなくて、仲がいい人とやるのがいいという訳でもないみたいだし、意外と両極端な方がやり易いのかなーと。普段話の合う相手とやるから良いわけではなくて。視点が違う人のほうが、ケンカするぐらいの方がいいのかなーって。
小林:
友達感覚になっちゃうと、仕事に関してはまずいと思いますね。かといって全然接点のない人とやってもしょうがないですから。距離感っていうのは大切かもしれないですね。
木内:
ちょっと見る角度が違う方が良いかな。そういう人がいればいいんですけど、今のところはまだ。
小林:
人のめぐり合わせはいいほうですか?
木内:
いいかどうかは分からないですけど。楽天的なんで、意外にいいんじゃないかと思っているんですけど。
小林:
それは重要ですよね。
木内:
楽天的だけどせっかちなんですよ。物事を自分で決めたペースで進めたい。人がなんと言おうと。
鄭:
それはせっかちと言うより、マイペースなのかも。
木内:
そうですね。設計してると、ここでデザインも決まって、って大体見える時ってあるじゃないですか。それがその通り進まないと嫌なんです(笑)。
小林:
決定とかも、そういうペースで?
木内:
決定は早めにする方だと思います。先延ばしはいけないとずっと言われてきたから。
鄭:
いろいろ考え方がありますね。
木内:
仕事以外でも、朝からやること決めてやるタイプかも。今日はここまで成果を出そうとか。一日の成果物がないと嫌な人かも。エライですか?
小林:
じゃあ、1年で356成果。
木内:
…まあ、毎日はやらない。(笑)間違いなく。
小林:
それは、やはり性格ですかね?
木内:
そうですね。
鄭:
夏休みの宿題も?
木内:
それはやらない。絶対やらない。嫌いなことはやらないと思います。
これからの展望●
木内:
改めて展望って聞かれると…みんな、必ず展望あるんですよね。
小林:
そうでもないですが。
木内:
さっき言ったみたいに、関心ごとはもちろん設計をしたいってのもあるんですけど…。 最近、自分でなくても設計をやる人は沢山いるんだなって思っていて、もちろん建築に関係してですが隙間的なことを、人が気付かないようなところを埋めるようなことができないかな、というのはあります。もちろん設計は楽しいですけど、住宅はお施主さん個々とつながっているっていうイメージが強い。公共の建物をやっているわけではないし、社会性がちょっと…。もうちょっと町に出て行くとか、やればいいのかなと思います。多分、そういうつながりを感じないから、ちょっと物足りなさがあるのかな。やっぱり、社会を変えるとか助けるようなことをやりたい、と思っているところがあるかな。たぶんそう。
小林:
そうすると、それは、公共建築なのか店舗なのか、または建築でないのか、それはまだ分からない?
木内:
まだ分からないですね。自分にできる範囲で。そこに人とのつながり、そして社会の一部であってほしいと思っています。
スタジオ8は静かな住宅地の中にありました。そこで手づくり感を大切に創作活動をしている木内さんからは、なにやら不思議な暖かさが伝わってきました。
聞き手:鄭、小林(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/

クレジットのない写真はすべてキャベッジ・ネット撮影
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