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第30号 伊原 孝則さん 「出来事を刺激するような仕組みをつくりたい」 |
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今回はflow architectureの伊原さんを訪ねました。伊原さんがエアマック・エクスプレスの中に見たもの、そして「建て売らない」建売住宅プロジェクトとは…?
伊原 孝則(いはら たかのり) 1987年 関東学院大学卒業(湯澤正信研究室) 1988年 アリアーテ設計 1990年 Creative Intelligents Associats Inc. 1993年 F.O.G Inc. 1993年〜 IA+D 活動開始 1997年〜 (株)岡部憲明アーキテクチャネットワーク参加 2002年 flow architecture を共同設立 現在 flow architecture 主宰 flow architectureのURL www.flow-a.com |
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「ネットワーク」と「フットワーク」が融合したエアマック・エクスプレス● |
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伊原: |
僕が最近買ったモノの中で一番おもしろかったのは、ネットワーク用のサーバーですね。エアマック・エクスプレス。 |
![]() AirMac Express |
小林: |
どこでもワイヤレスLAN環境になるっていう? |
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伊原: |
そうです。 何が面白かったかっていうと、アップルのデザインも面白いんだけれども、「ワイヤレスのネットワークを持って歩ける」っていう、ちょっと今までと違う感じがするところです。「ネットワーク」と「フットワーク」という全然違うものが融合したみたいな、そういう新しいモノの「あり方」です。 |
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小林: |
相反する「ワーク」がひとつになったと。 |
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伊原: |
あれで無線LANの他に何が出来るかっていうと、オーディオケーブルを繋げば、コンピューターからどんなオーディオにも音が送れる。アイチューンズでラジオが使えて、ポッドキャストが使えて、自分が持ってる音楽データが全てそこで使える。そうすると、音を聴く環境が全然変わってしまう。CDとかメディアの世界から一気にデジタルデータの音楽とか、そういうコンテンツの話になってきます。そういう感じで、自分の周りの生活に変化をもたらすモノは面白いと思いますね。 |
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小林: |
それも、こんなに小さな装置で…。 |
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伊原: |
馬鹿デカい機械がドンと置かれて「これで生活が変わります」って言われたら、そりゃあ変わるでしょう。でも、そうじゃなくて、ああいう小さいモノが一個ポツッと入るだけで生活が変わるとか、全体が繋がるとか、組み合わせの違いによって生活の変化が起きるとか、そういうものはすごく面白いなって思います。それは技術っていうよりもどっちかっていうと「発想」「使い方」ですね。 |
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伊原さんの周りでは、モノがよく壊れる● |
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伊原: |
でも、だいたい、僕にモノを聞くってのは間違ってるのかもしれない。 |
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小林: |
そうですか?いろいろ、面白そうなものがありそうじゃないですか。 |
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伊原: |
いや、デザインをやっていけばいくほど、自分の周りからモノを失くしたくなります。というのは、普段デザインしているモノに対しては必要以上の執着心とか持つ。そうすると、自分の生活の中であんまりそういう風にしたくなくなってくるんです。 |
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小林: |
ちょっと離れたいっていう感じなんですかね? |
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伊原: |
離れたいっていうか、興味の視点が変わるんですね。仕事の場合は、実際に出来上がった時に、かっこいいとか悪いとか、デザインがいいだとか素材がどうだ、っていうことを思います。だけど、普段の生活の中では、もうちょっと違う時間軸の中でそのモノのことを考えます。 うちの奥さんによく「あなたが持つと、よくモノが壊れるね」って言われるんですけど(笑)。使ってるモノがことごとく耐え切れなくて壊れていく。例えば携帯電話にしても、よく壊れる。もちろん人より使う頻度が高いせいもあると思うんだけど。洋服にしても、どんどん傷んでいく。それは、モノを大事にしないからだって言われるんですけど、違う!僕は、モノの100%のポテンシャルを引き出して使ってるからだって言いたいですね。 |
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小林: |
なるほど(笑)。 |
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伊原: |
学生の頃から10台くらいは車を乗り換えていると思うんだけど、そのうちの3台くらいは、やっぱり壊れて終わってるんですよね。第三京浜の途中でエンジンからプシューって煙が出て終わってるとか(笑)。エンジンがかけられなくて、いつも下り坂に止めて押しがけ発進していた車もありました(笑)。 |
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小林: |
整備はしてるわけですよね? |
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伊原: |
してますけどね…。モノの最期に立ち会うというか、すべてを使い切ってそのモノが終わると、記憶の中でまた別の愛着がわくような気がします。 |
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モノ派と出来事派● |
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伊原: |
そうそう、こだわって車に乗ってる人達と話をしてても、僕とは感覚的に違うんです。普通は、一つ一つのモノに対して執着を持ってる。一番大きい違いは、そのモノ自体よりも、例えば「この車はこういう経緯でこういう風になった」とか、そのモノに付属してくる情報に対してすごく執着するところですね。僕はそういうのとは違う意味で、車が好きなんですよ。 みんながモノに対して共有してる情報というのは、だれかが評価した基準であったりしますよね。でも、実際に自分が使ってるものは、それを超えて、自分にとっての意味が発生してくるところにすごく興味がある。 だからかもしれませんけど、僕は、どっちかっていうとモノを買わない方です。 |
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小林: |
買うんだったら完全に道具として、先の運命を考えてから買うってことですね? |
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伊原: |
そう。結局は買い替えるのが嫌な方だし、気に入らないとすぐ捨てちゃう(笑)。だから買わないのかもしれません。僕のモノに対するスタンスは、すごい分かりにくいと思います。 |
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小林: |
あんまりモノを持ちたくないっていう人や、買う時にはすごく吟味するっていう人は、実は今まで多かったですよ。 |
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伊原: |
あ、そうですか。衝動買いっていうのもあんまりないかな。もし衝動買いしても、3日経つとだいたい「いらないか」と思っちゃいます。 |
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小林: |
それは僕も同じかもしれないです。 でも、持ち物が壊れやすいっていう人は、今までにいなかったですね。 |
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伊原: |
モノに執着する人の中には、そのモノ自体や本質より、モノの周りについている情報だとかスペックに固執する人がいますね。 |
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小林: |
「うんちく」ってやつですかね?そういう人は「物派」ですけど、伊原さんは「出来事派」ですね? |
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伊原: |
そうですね。そのモノがあることによって何が変わるのか、何が出来るようになるのか…。 考えてみると、結局僕が一番お金かけてるのは、住むところです。学生の時からずっと自分の給料に見合わないところに住んでる。学生の時は2万5千円の安いアパートだったけど、八景島の海辺のところで窓をガラッと開けると海が見えるところでした。 結局は自分が住むところに求めるものって新しいとか古いとか、どんな設備がついてるとかよりも「環境」になっていくんだよね。今住んでるマンションは外国大使館の前なのね。ちょうど大使館側の窓から見える景色が、ぜんぶ樹の緑色だったからそこに決めた。やっぱり、そこに引っ越して正解だったなと思います。 |
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小林: |
確かに、いいモノではなくて、いい住環境は欲しいですね。 |
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伊原: |
結局住むところ。学生を卒業して初めて入った部屋っていうのが、伊勢崎町(横浜市)で、1Rにしては結構広い部屋でした。給料が手取りで18万円くらいしかないのに、8万円くらいのところに住んでいました。そう考えると一番家賃にお金かけてます。 |
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小林: |
じゃあ今日はおうちにお邪魔すればよかったですね。 |
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伊原: |
それが一番正解だったかもしれないね(笑)。 |
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「建て売らない」建売住宅● |
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伊原: |
最近ね、4棟の建売住宅をやったんです。普段受けている仕事は注文住宅で、完全なオートクチュール。でも建売住宅はそうじゃなくて、あくまでも建ったものを見て買うわけだから、誰が使うか分からない段階で、一般的なものに落とし込んだような設計をするわけですよね。作る過程が全く違っているので、モノに対する執着度は明らかに違います。 |
![]() ![]() ![]() 「建て売らない」建売住宅 photo:flow architecture提供 |
小林: |
設計では、ある程度こういう人達が買ってほしいなとか思いながら? |
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伊原: |
プランとか断面とかでいろんな生活のスタイルを提案したりはします。なかなかその通りにはならないのは当然ですが…。その4棟の住宅は、ガレージのある家、スキップフロアのある家、吹き抜けのある家1、吹き抜けのある家2っていう風にテーマをつくりました。 実は、これ、完成する前に売り始めて、お客がついたら、そこからできる範囲でカスタマイズOK、という売り方をしました。 |
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小林: |
じゃあ完全な建売っていうよりは…。 |
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伊原: |
そう。建売業者のやる「建て売らないプロジェクト」(笑)。 |
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小林: |
それは面白い。フタをあけてみて、どうでした? |
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伊原: |
半分は建てる段階で、半分は完成してから買っていかれました。そういう売り方にしたのは、ディベロッパー側の理由なんです。ディベロッパーは土地を仕入れてから、実際に建てて売るまでどこかで資金を調達してやってるから、その間の金利がどんどんかさみます。だから早く売れた方がいい。 ディベロッパーの方たちは、みんな「売れない、売れない」って言っていました。これだけ住宅ブームなのになぜ売れないんだろうと思って話を聞くと、売れ残るわけじゃなくて「自分が売りたいと思う時に売れない」っていうことらしいです。 |
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小林: |
あ、そういうことですか。 |
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伊原: |
要は、建ったタイミングで売れればそれで採算が取れるんだけど、すぐには売れないからまた広告を出す、販売活動をやる、なんやかんややる、金利がかさむ、経費がどんどんかさんでいく、そうすると、利益が目減りしていくから、しょうがないからダンピングしてでもいいから売っちゃえ、みたいな話になる。だから、なかなか利益が出ないみたい。 |
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小林: |
他にも物件はたくさんあるでしょうし、ジャストのタイミングで買い手が現れるというのは…。 |
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伊原: |
そうなんですよね。 でも、建売を買うお客さんの話をよく聞いてると「実物を見ないと、なかなか安心できないから建売にした」って言います。僕らが普段付き合ってるお客さんは、全くそういうのナシで、極端に言うと、僕と会って、図面一枚も出してないのに契約しましょうっていうくらいの話になる。建売と注文住宅では、つくり方が根本的に違う。その現場では、その中間みたいなことができないのかって考えて、こういう方式をやってみることになったんです。 |
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小林: |
なるほど。反響は? |
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伊原: |
反響は、すごくいい。見に来た人も「この家しかない」みたいな感じになります。それはもちろんそうです、他とは全然違うわけですから。 |
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住宅をプロダクトと同じように買うのはよくない● |
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小林: |
めんどうくさいから建売を買いたいっていう人もいるけど、そういう人でも注文で作ったものを見れば、こっちが良かったかなと思いますよね。 |
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伊原: |
そうなんです。建売を買おうかっていう人達は、どっちかっていうと車を買うのと同じ感覚なんですよね。カタログを見て、スペックを比較して、これなら大丈夫だろうと思って買う。でも実は、工業製品とは違うっていうことを認識できずに買っていってしまう。 |
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小林: |
マンションのCMみたいなものですよね。こんなにいいスペックだよって。 |
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伊原: |
だからうちの事務所では、スペックオタクの人はなるべく採用しないようにしてる(笑)。いわゆるスペックの比較になると、答えは一つになるわけじゃない?算数と同じなわけだから。でも、そのスペックが本当に必要なのかどうかっていう話は抜け落ちている。 |
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小林: |
買い手の判断材料も、どこかで聞きかじった知識だったりするんですよね。「こういうのがいいらしい」とかって。 |
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伊原: |
一般的にお店で売っているプロダクト商品をある人が買うときには、デザインの良し悪しの前に「必然性」があって買いますよね。その時にカタログの中から選んで買う人もいる。でもプロダクト商品は、パッケージされた商品コンセプトが、差別なくその人の手元まで届くから、逆に言うと、買ってからそれのいいところに気づいてそのものが好きになる、っていうことはあると思います。だけど、建築の場合は違いますね?プロダクトと同じような気持ちで買うと、その後の広がりが少ない。 みなさん同じように数千万のお金を出して、自分の家をいろいろな方法によって手に入れます。その中でも大きなシェアを持つ建売の層になんとか手をつけないと、やっぱり住宅全体はよくならないですよね。 |
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小林: |
このシステムを最初に提案したのは伊原さんですか?それともディベロッパー? |
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伊原: |
この「建て売らない」っていうシステムは広告代理店の人からの発想でした。モノを宣伝してる側。 建売業界に売れなくて困ってるっていう話があって、さっき言ったようなことが分かってきて、だったら早く売れる方法を考えようっていう話になりました。僕たちが普段設計をする時には模型も作ればプランもつくる、当然図面も書きます。それを広告代理店の人が写真撮って、ホームページに順番に載せていってそれがそのまま宣伝活動になっていくなら、「早く売れる可能性もあるんじゃないの」っていう話になりました。設計側から見ると、建売業界に違う形の建売のあり方みたいなものをねじ込んでいくっていう感じです。 |
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小林: |
なるほど。それは建売じゃないし、コーポラティブハウスでもない、けど、注文でもない。ニーズはあるでしょうね。 |
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新しい可能性を見つけ出す● |
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伊原: |
たいてい、建て売り住宅の設計の依頼というのは全部区画割が終わって、なにもかも敷地割が終わった段階で、はい、ここに建てて下さいっていう風にして渡されます。そうすると結局単体での開発になっちゃってて、敷地境界の中でどう建てるかっていう話にしかなっていかない。そうすると単独の建築の話しにしかならないんです。 でも、建売の面白いところは、何棟かの建築が一カ所にまとまることによって、小さい町並みみたいなものに手をつけられる。今後も、最終的には、そういうことをやっていきたいですね。 |
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小林: |
建売も、やり方次第でどんどん魅力的なものに変わる可能性は秘めていますね。 |
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伊原: |
他にも住宅をいろいろやってるんですけど、お客さんとは、それが良いとか悪いとか、間取りがどうとか、生活がどうだっていう話をしていますけど、実は、エアマック・エクスプレスみたいなものが住宅の中に自然に溶け込んでいって、あなたの今までの生活がこういう風に変わるんですよっていうことを、本当の意味で提案していきたい。 |
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小林: |
そういう仕組みを含めての設計ということですね。 |
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伊原: |
お客さんが新しい家に住んだ時、デザインが生活に根付いていくと思うんですけど、モノと人との関係っていうのは住宅がある限り続く。でも、次第にモノとの関係よりも、そこでどういうことが起こっていくのかが重要になってきます。だからそこを刺激する仕組みを何かつくっていけないかなって思います。 特に最近興味があるのは、出来たものとその人がどう関わっていくかとか、モノの「つくり方」を新しく考えられないのかなっていうっていうところですね。 |
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小林: |
つくり方を新しく? |
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伊原: |
いろんなものつくってみて思うのは、まずプロセスや実際そこに関わる人によって、出来るものって全然違いますよね?そしてその差異が商品化される訳ですけど、そのパッケージ化の過程をなるべく開放的にすることでたくさんの消費しきれない残余を生み出しゼロに向かわないモノとの関係を作り出せないかと思っています。 |
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小林: |
具体的にいうと、どういう状況でしょうか。 |
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伊原: |
例えば、今のデザイナー住宅とかデザイナーズマンションって言われてるものが、このままいくと、使う側の生活を崩壊させかねないと思うんです。スタイルを与えすぎちゃって、その先にあるものは、スタイルと状況が乖離したような状況でしょうね。それはある程度しょうがないにしても、モノとして消費されていった後に残る出来事としての記憶が、生活のなかでなくなりもしないがかたちあるものでもない、あやふやなものとして積み重なっていけるような緩い関係が発生する余地をつくり出せないかということです。つくりすぎないとかデザインしすぎないという意味ではなく、つくられたモノの価値が消費されていくと同時に違う価値感がたち表れてくるような状況。そういう関係を構築できるタイミングは、実はそのモノを「つくる時」しかないような気がしています。 |
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モノを買わない、持たないという伊原さんですが、それは、価値観を変えてしまうようなモノかどうかを鋭く見抜いている結果のようです。そんな中でも、一番お金をかけているのは「住まい」というのは、思わず大きくうなずいてしまいました。 |
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聞き手:小林、竹下(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/)
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