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第2号   原田真宏さん、原田麻魚さん  「楽しくないことは、我慢がなんねぇ」
今回は田園調布のマンションの一室に事務所をかまえる、原田真宏・麻魚さんを訪ねました。テラスからは町が一望でき、穏やかな天気と相まってとても居心地の良い事務所でした。お話は、奥にある和室で年季の入ったちゃぶ台を囲みながら・・・。

Mount Fuji Architects Studioの
ホームページ http://www14.plala.or.jp/mfas/fuji.htm
メールアドレス fuji-s@rmail.plala.or.jp
鄭: Mt. Fuji Architects Studioには、ずいぶんいろいろと目を引くものがありますね。いくつかピックアップしてお話しいただけますか。
原田(麻): そうですね・・・
●なにやら細長い黒いものをとりだして・・・
原田(麻): これは内藤廣さんの「海の博物館」で買った、うなぎのぬいぐるみです。一目見て気に入ってしまって、思わず買ってしまいました。

小林: へー、そば殻が入ってるんですね。うなぎにしては曲がらない。
原田(麻): そうそう、これがかごにいっぱい刺さってて。そのなかから・・・「選ばれし一品」ですね。よくできているでしょう?我が社のトップアイドルです(笑)
原田(真): 魚が好きですから、柳刃包丁なんかもあるんですよ。結構使ってますよこれは。
●かなり使い込まれた柳刃包丁が登場
実はこれ、スペインにいるときにバルセロナで一番大きなデパートまで探しに行って買ったんです。あっちの包丁だと材料をつぶす感じになって、刺身が美味くできないんです。
鄭: これは普通想像する包丁とは、持った感じが全然違いますね。
小林: これは、まるで刀だ。そうすると、料理は結構されるんですか?
原田(真): 料理は好きですね。忙しくなってくると料理をしてます。
鄭: その気持ちは、すごく良くわかりますね。料理って、現実逃避にはもってこいですよね。
原田(真): 外でご飯ってのも得意です。コンロと中華鍋をリュックに詰め込んでキャンプ場とかに行って料理すると、すっごく美味しいものができたりするんです。ここでも朝食は毎日外で食べています。テラスにそのためのデッキもつくりました。
原田(麻): デッキといって良いのかどうか(笑)。
原田(真): アウトドア派なんで、旅行もしたいのですが。なかなか出来ないですね。建築家はもっと旅行できる職業だと思っていたんだけどなァ・・・。
●アルミの3角錐のオブジェを取り出して
原田(真): これはこのまま教会建築になるなと思って。
原田(麻): このままぽんと置いたら、すごくいい教会になりますよ。
鄭: へー、これは下から覗くと、小さい穴が光の球になって見えるんですね。
原田(真): ええ、光の球があって、その中心に星がみえる。
たとえば、教会の中で見上げたときに、そういうふうなことが起きていたらいいな、と思うんです。
原田(麻): スイスへ旅行に行ったときに、今は神戸芸工大で先生をしているカスパー・シュワーベ氏にもらいました。
●他にも珍しい本など、建築に関わるもの関わりが少ないもの、とりまぜていろいろと見せていただきました。
原田(真): なんだか仕事してる感じがしませんね(笑)
原田(麻): しませんね。建築家の実態が浮き彫りにされていきますね(笑)。
●では、ここから少し建築の話を・・・
小林: こうして見ると、原田さんたちは、いわゆる”建築家”のイメージとはかけ離れていますね。それがかえってクライアントに受け入れられ易いのでしょうか。
原田(真): 設計って、結局は人と人との関わりなので、その場に巻き込んでしまえばいろいろ楽しいことが出来るといつも思っていて、どんなクライアントにもまず絶対に「楽しんでくださいね」と言うようにしています。これは、毎回、必ず言っています。これまでそうして来られたことは、恵まれていると思います。
小林: XXXX-houseも拝見して思ったんですが、クライアントの理解がないとできないですよね。
原田(真): 僕らがあまり建築家っぽくないのが、いいのかなという気もしているんです。基本的に工作少年で、だんだん大きなものを作っていったら建築になっていた、という感じなので。そういう要素のあるクライアントとは、いきなり解りあえますね。
●過去の作品のスタディー模型をいろいろと見ながら・・・
  あまりスタイロフォーム(発泡スチロールのような素材でヒートカッターで簡単に加工できるので、建築物のボリュームを検討する時によく使われる)的なものは使わないで・・・。スタイロカッターを買えないという、ひがみもあるんですが(笑)、ボリューム・スタディやってると元気がなくなってきちゃうんですよ。
原田(麻): むしろ、マテリアル・スタディなんですね。



photo:Mt.Fuji Architects Studio
小林: このXXXX-houseのスタディ模型は何種類かあるんですね。
原田(真): X型ではなく壁がV型に組まれたタイプもスタディー段階ではありました。でもそれだと工事途中に壁だけで自立しないので問題になって、Xになりました。
原田(麻): この模型たちの上下は、設計者のみが知るものですね。
原田(真): あ、それはさかさまです。
いろいろやってはいるんですが、工作少年の頭で理解できる程度のことしかやってないんです。どれも模型がそのまま建築になった、という感じです。なんだかよくわからないような「センタン技術(笑)」は使っていませんので、問題は最初にほぼ解ってしまうんです。
小林: このXXXX-houseは総工費150万円と伺いましたが?
原田(真): これははじめに150万円という金額ありきで。いろんな職人さんが手伝ってくれて、ほとんどボランティア状態だったかもしれません。好き者が集まればこんなこともできるんですよ。
ただ、毎日工事の後は宴会してましたから、その辺は高くついたんじゃないですかね(笑)。
これで、平屋なら自分たちでつくれるんだという自信はつきましたね。ぼくたちの理想は「アトリエ工務店」ですから。
原田(麻): それはいい!!道楽ですよね。作れるのは年間1軒くらいかな。
●現在設計中のものについても少しお聴きしました
原田(真): 今のところクライアントは人づてに紹介されることが多いです。この住宅もそうです。これは今までと違って直線的で、ずいぶん「大人な」建築になりました。
原田(麻): 初の大人建築です。
小林: これは木造の・・・大空間ですね。
原田(真): クライアントがプラモデルとかカメラのコレクターでして、プラモデルが押入れ4杯分くらいあったり!自転車もいいものをいっぱい持ってますね。ご友人とよく自転車自慢をしあっているようです。

それから、葉山の海岸沿いに立つ一棟貸しのホテルのプロジェクトもあります。会員制の貸し別荘かな。ランドスケープと一体になった建築をつくりましょう、ということで始まりました。宿泊料がとても高額なので、設計者割引でも泊まれないな・・・(笑)。
小林: 人生の重要な日には泊まろうと思う人はいるんでしょうね。記念日とかで・・・
原田(真): あとはパーティーでしょうね。
●原田さんはご夫婦で一緒に建築をされているので、その辺のことも伺いました。
小林: 仕事と生活の両方の場面でいつも一緒にいるというのは、どんな感じですか。
原田(真): いろんな人と話すようにしないといけないなあと思うんですよ。
原田(麻): だんだんと、言葉が少なくなっていくんです。
原田(真): 二人の間に差がなくなってくると、言葉がいらなくなってくる。
位置エネルギー的なポテンシャルがなくなってしまうのはマズイなと思っています。
原田(麻): 「届けよう」という気持ちが少なくても、なんとなく伝わってしまう感じです。 だから、たまに見知らぬ言葉を開拓しようと「10+1」(建築専門誌の中でもかなりマニアックな雑誌です)とかを読んでいます。建築的言葉をちょっとでも身につけようと思って。
原田(真): ぼくは読まないですね。建築論とか・・・。基本的にナマケモノなので、他のクリエイターの解釈に前もって接してしまうと自分で感じたり考えたりしなくなってしまいそうで。自分の身体で生の環境を直接感じてデザインするのが持ち味なので、避けているのかな。
原田(麻): でも・・・面白いよ。
●とても気持ちのよい天気だったので、Mt. Fuji Architects Studioのテラスから町を見渡しながら
鄭: ここで、昼寝なんかすると気持ち良さそうですね。
原田(真): このデッキは一応、寝られるように作ってあるんですよ。サイズとか。
犬を飼いたいんですけどね。でもテラスではちょっとかわいそうかなと思って。
原田(麻): なにか、生き物がほしいですね。
犬飼いたいな・・・、うなぎがこんなにかわいいんですから。
原田(真): ビーグル犬を飼いたいんですよ。あの身の詰まった感じがいい。
小林: ハムっぽい感じですよね。
原田(真): そう、ハムっぽい。
痛いんですよね、あの尻尾が当たると。ぺしぺしと(笑)。
原田(麻): 庭付きを・・・、そのうち社長が!
一同: (笑)
原田(真): 庭がほしいですね。ちっちゃくてもいいから。
原田(麻): 6畳ひと間で平屋の狭い家でもいいから、外があればいい。
鄭: 住む上では、室内なんてそんなに広さは必要ないんですよね。寝食が満たせれば家なんて必要ないかも知れません。原田さんなら、庭さえあればテントを張ったりして暮らせそうです。
原田(真): なんとか、家は自分たちで造れそうですしね。
原田(麻): 「東京デザイナーズブロック」に出品した、「発泡ポリウレタンの家」だって住めますね。
原田(真): そうそう、1.8m角の風船をふくらませてそれに発泡ポリウレタンを吹き付けて(発泡ポリウレタンは建築物の外壁の内側に吹き付けて、断熱材としてよく使われる素材です)、「発泡ポリウレタンの家」を造ったんですよ。災害時居住がテーマだったんですが、暖かくて、静かで、とてもよかったですね。パンナイフで加工ができますし、強度もかなりあって上に2〜3人乗っても大丈夫でした。

photo:Mt.Fuji Architects Studio
原田(麻): 埼玉の工場の駐車場でつくったんですが、大きくなりすぎちゃって、会場の麻布まで運ぶのが大変でした。
トラックに乗らなくて、ちょっとノコギリで切ったりして無理矢理乗せたんです。
原田(真): 発泡ポリウレタンを吹き付けていると、どれくらいの厚みになったのかが判らなくて、厚いところでは、15cmくらいになっていました。でも、もっと薄くてもよかったんですけど。
小林: 反響はどうでしたか?
原田(真): ありましたよ。「面白い!」とか、「なんだこれは!?」とか・・・
原田(麻): 自分のマンションにつくりたい、という方が現れたりして。そういえば、主宰者のイデーの方が防衛庁に売り込みに行ってくれたとも聞いています。
鄭: 自宅に簡単につくれる音楽室とかにも、いいんじゃないですかね。
原田(真): ああ、そうですね。自由な形にできますし。風船でつくれる形ならば何でもできますから。制作費も1.8m角で3万円位でしたか・・・。
小林: 新潟では震災当時、テントや車中での生活を強いられていましたが、「発泡ポリウレタンの家」は寒冷地での災害時緊急仮設住宅として活用できそうですね。
原田(真): 振り返れば、ずっとこんなことをやっているんだなーと思いますね。
原田(麻): この蓄積があれば、どこででも暮らせるって感じですね。
小林: 本当につくることを楽しんでらっしゃいますね。
原田(真): 楽しくないことは、多分できないんですね。適正がないんです。
原田(麻): 「我慢がなんねぇ」って(笑)。
小林: ですから、クライアントも楽しめる人でないとだめなわけですね。
原田(真): クライアントも「共犯者」になってくれないといけないんです。悪のりして。
小林: 住むためのモノ、というよりは、楽しむための仲介物なんですね。
原田(麻): 建築って住み始めても楽しみは続きますから。
原田(真): 別に竣工したときが完成って訳じゃない。完成したら白い手袋をしてピンも打てないような建物はどうもなあ、と思います。抽象芸術の中で暮らすのが好きだという人にはいいんでしょうけど・・・。
鄭: 原田さんたちのスタイルだと、その建築が存在する限りはつきあわなくてはならない、という覚悟は必要ですね。
原田(真): 時々、すごいリスクを感じることもありますよ。でも、それでいいんだと割り切っています。
鄭: 設計していると「住んでみてから考えた方がいい」ことが結構ありますよね。生活を始めてからしか決められない、というか。クライアントはそういう部分もみんな決めたがるものですが・・・。住みながら造り、造りながら住む方が、住み手も楽しいと思うんですけどね。
原田(真): 自分が、いてもいなくても変わらないような家というのは、冷たいですよね。生活しながら、ずっと造り続けるようなものがいいですね。そういう余地が残っている建築を造っていきたいと思っています。
気持ちのよい陽気の中、笑い声の絶えないインタビューになりました。話をすること一つ取っても「楽しもう」という気持ちが伝わってきて、「楽しむ」ということを再認識させられた気がします。昼寝でもしていきたいような心地よさに後ろ髪を引かれながら、我々はMt. Fuji Architects Studioを後にしました。
原田 真宏(はらだ まさひろ)
1973 静岡県生まれ
1997 芝浦工業大学大学院修士課程修了(三井所研究室)
1997〜2000 隈研吾建築都市設計事務所
2001 文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受けホセ・アントニオ & エリアス・トレス アーキテクツ(バルセロナ)に所属
2003 磯崎新アトリエ
2003 原田麻魚と共に「Mt.Fuji Architects Studio」設立
原田 麻魚(はらだ まお)
1976 神奈川県生まれ
1999 芝浦工業大学工学部建築学科卒業
1999 原尚建築設計事務所
2000 建築都市ワークショップ所属
2002 アート・アドミニストレーション・グループ「unpac」共同設立
2003 原田真宏と共に「Mt.Fuji Architects Studio」設立
聞き手:鄭、小林(生活普段議 www.cabbage-net.com/seikatsu/
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